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零時迎車異聞録

[Meta][Genre:Dark Breakbeat Jazz, Acid Jazz][BPM:172][Key:D Minor][Instrumentation:Upright Bass, Jazz Drums, Piano, Muted Trumpet, Baritone Sax, Vibraphone, Analog Synth][Vocal:Male Japanese Storyteller, Edo-Style Diction, Ghostly Responses][FX:Taxi Radio Static, Rain, Rear-Door Chime, Distant Bell] [Intro][Spoken][Taxi Radio Static] さても今宵の丑三つ前 濡れた都を流す一台 客の姿は見えねども 配車の札が ちりんと鳴った [Verse 1][Rapid Jazz Groove] 迎えは古びた高架の下 名は「おきぬ」と記されておる ずいぶん古風な名でござんす されど銭なら逃すまい 指定の場所に着いたれど 傘も人影もありゃしねえ 取り消そうと指を掛ければ 後ろの戸が ひとりで開く [Pre-Chorus][Rising Piano Runs] 「旦那 まっすぐ願います」 耳の真後ろ 女の声 鏡を見ても席は空 濡れた足跡だけがある [Chorus][Full Brass][Ghostly Response] 走れや走れ 夜を裂け 赤き信号 みな青に変わる 止まれば後ろが近くなる 振り向くなよと 鈴が鳴る 走れや走れ 橋を越え 行く先知らずの迎え車 「まだかえ まだかえ」 へい ただいま 命の外まで お送りしやす [Verse 2][Faster Breakbeats] 曲がれと言われた四つ角は とうに塞がれた古い道 地図の矢印ぐるりと回り 十五年前へ案内する 雨に滲んだ交差点 潰れた車が見えてきた なんとそいつはこの車 運転席には おいらの顔 [Pre-Chorus][Brass Stabs] 思い出したぞ あの晩を 客を乗せずに散ったこと 毎夜毎夜の流し稼業 死んだと知らずに続けてた [Chorus][Full Brass][Ghostly Response] 走れや走れ 夜を裂け 黒き街灯 背を向け揺れる 止まれば名前を呼ばれやす 生者のふりも これまでか 走れや走れ 橋を越え 冥途へ向かう迎え車 「まだかえ まだかえ」 へい おきぬさん どうやら客は おいらでござんす [Bridge][Half-Time][Close Whisper] 女は静かに笑いやした 「迎えに来たのは わちきの方さ」 料金表示は零のまま 行き先だけが 墓場と灯る [Final Chorus][Double-Time][Wild Horns] 走れや走れ 夜を裂け 夜明けの前にゃ帰れぬ定め 後ろの席から手が伸びる 冷たい指が 肩を叩く 走れや走れ 霧を越え この世を降りる迎え車 「着いたかえ 着いたかえ」 へい ただいま 次なる御客を 待っておりやす [Outro][Spoken][Engine Idle] もしも零時を回った頃 運転手の見えぬ車が来たら 戸を開けずに お逃げなせえ 配車の札に出る名前が あんた自身でなけりゃあ……よいがね