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❄︎夏氷、溶けないまま〜Unmelted Summer〜❄︎

V5.5

(まだ 溶けてない) 簾の下に 影が集まって 匙が 硬いものに当たる 隣の椅子は 空けたまま 氷は 角を崩さない 夕立の匂い 通り過ぎて 屋台の旗が 濡れずに乾く 名前を呼ぶ ちいさく ためしに 返るのは 削る音ばかり 夏氷 溶けないで残ってる 掌の熱を 渡しているのに 熱いのは いつも世界のほうで 冷たいものだけ 崩れずにいる 蒼が ざらめの底で光る わたしは 匙を止めない 足元に 影がひとつしかない 気づいたのは 陽が傾いてから 待ち合わせの角で 風鈴が鳴る 誰も 揺らしていないのに 削る音が ふたつ 重なって わたしの手は ひとつしか動いていない 甘い水が 頬をつたって それでも 温度は上がらない 夏氷 溶けないで残ってる この夏を 終わらせないつもりで 熱いのは いつも世界のほうで わたしの側は 静かに白い 呼ばないよ もう名前は 削る手が 覚えている 消えたのは どっちだったんだろう 透ける手で 匙を持っている 振り返っても 影が追いつかない 夏氷 小さくなっても まだ 白いまま ここにいる 熱は 世界のほうへ返して わたしは 冷たさを選ぶ 溶けなかった この夏の分を 掌に 乗せたまま (まだ 溶けてない) 削る音が 止まる