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占いで前世が〇〇と判明しました|お題:星ニーナさん

V6

商店街の小さな占い屋 五百円玉を置いてみた 水晶玉を見つめたまま おばあちゃんが首をかしげる 「あなたの前世は……公衆電話」 えっ? ちょっと待って せめて人間がよかったな 「しかも古い緑の電話」 笑いかけたその瞬間 胸の奥でベルが鳴った リンリンリン リンリンリン 知らないはずの街の音 僕は誰かの言葉を 運ぶために立っていた 古い商店街の角 小さな屋根の下にいた 雨の日も雪の日も 受話器を取る手を待っていた 学生服の男の子 十円玉を握りしめ 好きな子の家に電話して 名前を言えずに切っていた 次の日も また次の日も やっと言えた「好きです」に 僕まで嬉しくなったけど 電話だから笑えなかった リンリンリン リンリンリン 言えなかった言葉がある 「好き」も「ごめん」も「ありがとう」も 僕は何度も運んでた 作業着姿のお父さん 夜遅くに電話をかけた 「母さん 元気でいるか」 「正月には帰るから」 受話器を置いたそのあとで 何度も目元を拭いていた 僕はただそこに立って 背中を見送るだけだった 誰かの声を届けても 僕には声がなかった 誰かの涙を見つめても 拭ってあげる手がなかった それでも毎日待っていた 誰かがここへ来ることを やがて街の景色が変わり 誰もが電話を持つようになった 僕の前を通る人たちは もう立ち止まらなくなった ある朝 胸に貼られた紙 「来週 撤去します」 ああ そうか 僕の時間も終わるんだ 最後の夜はひどい雨 シャッターの閉まった商店街 小さな女の子が走ってきた 靴も靴下も濡れたまま 震える指で番号を押す 一度 二度 三度 なかなか繋がらない 「お願い……出て……」 僕には何もできなかった 受話器を握ってやることも 寒い肩を抱くことも ただ繋がれと願っていた そして小さな音がした 「もしもし?」 「お母さん……迎えに来て」 向こう側から聞こえた声 「そこにいてね すぐ行くから」 女の子は泣きながら笑った 「うん」と小さく頷いた その一言を届けられた それだけでよかった もしも僕がもう一度 あの街角に生まれても 誰にも名前を呼ばれなくても あの電話になりたい 「迎えに来て」と泣いた声に 「すぐ行くよ」が届くなら 世界を変える奇跡より その一言を繋ぎたい 目を開けたら占い屋 おばあちゃんがお茶を飲んでた 「どうだった? あなたの前世」 僕は少しだけ笑って 「悪くなかったみたいです」 外に出ると雨が降っていた 商店街の角を曲がると 古い電話のあった場所に 小さな花が咲いていた ポケットの電話が震えた 画面に懐かしい名前 「もしもし 元気にしてる?」 何気ないその声を聞いて なぜだか涙がこぼれた 前世の僕にはできなかった 自分から伝えるということ 「うん 元気だよ」 それから少し息を吸って 「電話してくれて ありがとう」 「声が聞けて 嬉しかったよ」 もしも僕がもう一度 あの街角に生まれても 誰かと誰かを繋ぐため あの電話になりたい だけど今はこの声で 大切な人に伝えたい あなたが笑ってくれること それが僕の幸せです 雨上がりの商店街 空に小さな虹が出た 僕はもう電話じゃない だから今度は僕の声で 「ありがとう」 ちゃんと届いたかな