夜の隅から 覗いていた 弱い灯りの 人の子ひとり アタイはおまえの 胸の隙間に 爪を立てて 棲みつくつもりだった 寂しい夢の 底に忍び その心ごと 喰らうつもりだった なのにおまえは 怖がりもせず アタイの影に ありがとうなんて 馬鹿みたいに 笑いやがった 弱いくせして 眩しい顔で アタイがいただく そう決めていた アタイの獲物だ そう言い聞かせた 夜の向こうで よその妖が おまえの灯りに 舌を鳴らす おまえの胸に 棲みついて 灯りの根まで 喰うつもりだった なのに今夜も 影を裂きながら おまえに触れる厄を 噛み殺している 守るなんて 呼ぶんじゃないよ これは縄張りだ アタイの呪いだ おまえは人を 疑わないから 心の扉を 開けたまま眠る 嫌なものほど 隙間を好む 甘い匂いに 群がるように アタイはただ 横取りされたくなくて 牙を剥いただけ そのはずだった なのにおまえの 眠る横顔 見ているだけで 胸が痛む アタイがいただく そう笑っていた アタイの獲物だ そう吠えていた アタイが守る そう口にした時 一番驚いたのは アタイだった その眠りへ 影を垂らし 朝の来ない夢に 沈めるつもりだった なのに今夜も 悪夢の底で おまえの涙を 代わりに飲んでいる 守るなんて 呼ぶんじゃないよ 勘違いするな アタイの呪いが おまえの灯りを 離さないだけ おまえはそんな アタイがいいと言う 勘違いも 甚だしい いや 勘違いしているのは アタイの方なのか 「君を心配させなくてもいいように 強くなるよ」 ば ばかやろう 惚れちまったら どうすんだよ 黒い手が おまえに伸びた アタイの影が 裂けて散った 喰らうつもりの その灯りを 傷だらけで 抱いていた 憑くはずだった 喰らうはずだった なのにこの爪は おまえを庇って折れていた 守るなんて 呼ぶんじゃないよ これは呪いだ アタイの呪いだ だけどおまえが 生きているなら アタイの影など どうでもいい 「僕の中でお休み もう独りで消えなくていい」 ばかやろう そんなこと言うな 本当に 憑いちまうだろう 憑くはずだった 呪うはずだった なのに今は おまえの中で眠ってる これからは ずっと一緒だ アタイの呪いで おまえを守る 夜の隅から もう覗かない おまえの胸で アタイは眠る