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前九年合戦:炎立つ ― 黄金の平泉(ひらいずみ)へ続く、血の轍 ―

[Verse 1: 名門の矜持と奥羽の土] 奥羽(おう)の果てに 降り積もる白き沈黙(しじま) それは千年の孤独か あるいは血脈(けちみゃく)の呼び声か 藤原経清(ふじわらのつねきよ) 秀郷流(ひでさとりゅう)の誇り高き末裔(まつえい) 河内源氏の剣となりて 頼義(よりよし)の背を支えし日々 武士(もののふ)の義は 都の雲に誓いしはずが 陸奥(むつ)の雪に触れ その心は静かに変わりゆく 安倍の娘を娶(めと)り 架け橋という名の楔(くさび)となりて 土の香りと 蝦夷(えみし)の歌に 魂を絡ませてゆく やがて氷は割れ 疑念の濁流が 主従(しゅじゅう)の絆を削り落とす [Verse 2: 離反の烽火と決断の冬] 鬼切部(おにきりべ)に 火の手が上がり 戦の鐘が鳴る 源氏の威光か 奥州の民の 安らぎの地か 経清の胸に 去来するは 裏切り者の汚名ではなく この地と共に 朽ち果てるという 一筋の覚悟 都の官(つかさ)を脱ぎ捨て 荒ぶる風の盾となり 安倍頼時(あべのよりとき)の 右腕として 戦陣にその身を投じる 「義」という名の鎖を断ち切り 「血」という名の宿命(さだめ)を選び 凍てつく夜空に 反逆の烽火(のろし)を 高く突き上げる [Verse 3: 黄海の雪原と八幡太郎の覚醒] 黄海(きのみ)の原は 地獄の業火(ごうか)に 包み込まれる 頼義の軍は 雪に足を取られ 壊滅の縁(ふち)に立つ わずか七騎の敗走 絶望が闇を 塗り潰すとき 十九歳の戦神(いくさがみ) 義家(よしいえ)が 雷鳴を呼び起こす 百発百中の矢は 経清の兵の 胸を次々に貫き 「八幡太郎(はちまんたろう)」の名が 北の山々に 轟き渡る 父を救い 敵を蹴散らし その瞳には戦鬼が宿る 経清と義家 二つの魂が 雪原で火花を散らす [Interlude: Progressive Electronic pulse. Heavy Taiko percussion. Biwa plucking.] [Verse 4: 白符の挑発と壊された尊厳] 戦は泥沼となり 五年という月日が 情けを奪う 経清は笑う 国府(こくふ)の権威を 白き符(ふ)で嘲(あざけ)り 頼義の印を 紙切れに変え 自らが税を司(つかさど)る それは都への反旗 それは源氏への 痛烈な刃(やいば) 「お前の治める地など もはやどこにも無い」と 冷酷な挑発が 頼義の老いた心に 憎悪の火を灯す 尊厳は引き裂かれ 武士の誇りは 黒く焼け焦げてゆく [Verse 5: 厨川の炎上と錆びた太刀の処刑] 厨川(くりやがわ)の柵に 紅蓮(ぐれん)の炎が 襲い掛かる 安倍の野望は 崩れゆく壁と共に 灰へと消える 捕らわれの経清 その眼光は 屈辱を跳ね返し 頼義の前に 泰然(たいぜん)と立ち 最期の時を睨(ね)めつける 「五年間の恨み ここでその身に 刻んでやろう」 頼義が取り出したるは 刃の毀(こぼ)れた 錆びた太刀 首を打つのではなく 鋸(のこぎり)のごとく 引き切る処刑 絶叫は風に消え 誇り高き男の 命が削り取られてゆく [Ending: 炎の記憶と黄金への祈り] 炎の赤に染まり 七歳の清衡(きよひら)は 父の死を刻む その悲しみは やがて平泉(ひらいずみ)の 黄金(こがね)の蓮へと変わる 義家は見つめる 変わり果てた宿敵の 静かなる骸(むくろ) 北斗の星が照らす 凄惨(せいさん)なる戦の 果てしなき幕切れ 雪はすべてを覆い 兵(つわもの)たちの夢は 大地へ眠る 語り継がれるは 「炎立つ(ほむらたつ)」 北の地の 永遠(とわ)の調べ [Outro: 電子音と和楽器が交錯し、最後はバイオリンの微かな一音で終焉を迎える。] [End]