
あの日、君が出ていったあと 玄関に残った小さな靴跡を 消すことができなくて 朝までずっと眺めてた いつもなら「おやすみ」って 君の声が聞こえる時間 静かな部屋の真ん中で 一人で時計の音を数えた 君が好きだった紅茶を 今でもたまに買ってしまう 二人分のお湯を沸かして 途中で一人だったと気づく 君がいないだけなのに どうしてこんなに寒いんだろう 窓の外はいつもと同じなのに 僕だけ昨日に取り残されてる 君がいない夜は長すぎて 眠ることさえ怖くなる 目を閉じれば君に会えるのに 朝になればまた消えてしまう あの日の「またね」が 最後になるなんて知らなかった だから笑って手を振った それが一番悔しい もっとちゃんと見ておけばよかった もっと名前を呼べばよかった もっと「好きだ」って言えばよかった 後悔ならいくらでもできる でも時間だけは戻ってこない 君の写真を見ながら 何度も「元気?」って聞いた もちろん返事はない それでも消せなかった 君が幸せならそれでいい そう言えるほど強くない 誰かの隣で笑う君を 想像するだけで苦しくなる 忘れたくない 忘れられない 忘れたふりさえできない 僕の中ではまだ 君と歩いた帰り道が続いてる 「寒いね」って笑う君に 「じゃあ手つなぐ?」って言った僕 あの頃に戻れたなら 今度こそ離さない ……そう思ってたのに 君が最後に置いていった 合鍵を握りしめながら 僕はやっと気づいた 君はもう 帰ってこないんだ。 さよなら。 大好きだった。 誰よりも大切だった。 君と出会えてよかった。 君と過ごせてよかった。 君を愛せてよかった。 だから最後に一つだけ―― 君が置いていった観葉植物、 枯れる前に引き取ってくれない? 僕、植物まで育てる余裕ないんだ。

