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氷菓

V6

透かした向こうが歪むほど 満ちていた空気が淡くなる まだ綺麗だと思う内に さっきのものではなくなった 眺めるだけなら残るのか 触れずにいれば保つのか そんな迷いを知る前から 端から少し消えていた いちばん綺麗な瞬間を 誰もその時には知らない 気づいた頃には決まって もう少しだけいなくなっている 消えていくから目を奪う 残る色ほど澄んで見える 満ちていた頃を惜しむより ほどける途中に見惚れていた 留めようとした指先から すり抜けた何かに変わっていく そこに在ると知った時には また少しずつ失くしていた 昨日より僅かに見えるだけ それを終わりとは呼べなくて まだ消えないと眺めるほど 初めの色が分からなくなる 薄くなったその向こうに 今まで見えないものが見えた 何かをひとつ失うたび 透明だけが増えていった 変わらないことを願うほど その瞬間だけ遠くなる 留めておけないものだから うつろう姿を覚えていた 崩れていくから目を奪う 残る形ほどはっきり見える すべてを失くすその手前が いちばん深く記憶に残った 惜しむ間にも薄れていく 理解も追いつけず見送るように 最後に残ったひと雫まで ただ綺麗だと思っていた 満ちていたものが 少しずつ透けて たしかだったものが 気配になって 気配だったものも やがて見えなくなる そのどこからを 「ない」と呼ぶのだろう? 離れていくから目を奪う 終わりに近いほど澄んでいく 在った証を残すより 何も残さずほどけていく いつかすべてが透けたなら 最初の色も忘れるだろう それでも消えるその途中を 綺麗だと思えたなら それだけでいい それでいいんだ