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斜陽と雨宿りと余白回路の無限ループ

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V5.5

教室の隅、私はいつも 背景(モブ)の一部として生きる 誰の視線にも留まらない 私はただの、余白の記号 不意の白雨(はくう)に追われて 逃げ込んだ、駅の庇 湿ったコンクリートの匂い 私の肺を、冷たく満たす 滑り込んできた一つの影 私の隣で、ふと足を止める 同じ制服の、同じクラスの いつも孤高の中にいる彼 言葉を交わしたことさえない 仄かな熱が立ち上る 激しい雨音が、世界のノイズを消す 私たちは今、静かな一対の回路 視線さえ交わさぬまま、息を潜める ねえ、このスコールが止まなければいいのに 外界から切り離された わずか数歩の、虚数空間 彼は壁に背を預けたまま 暗い雨の幕を見つめている 私は胸元に、そっと 読みかけの文庫本を強く抱いた 色褪せたカバーの中に 並ぶ、孤独な文字の列 「――恋、と書いたら、あと、書けなくなった」 低く硬質な彼の声が 私の耳元で、静かに波形を描く 驚いて顔を上げれば 彼が私を見つめてた 「斜陽、おれも読んでた。」 彼が私の名前を呼んだ 鼓動がパルスのように跳ねる あの冷たい眼差しの奥に 私は確かに、存在していた 世界に光が奔る 誰も呼ばない私の名前 貴方の声が、私を定義する 触れ合わぬ指先のあいだ しなやかな引力に溺れていく 私の名前を呼んだ、あの残響が 胸の奥を、無限にループしてる