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幽世神楽 ー八つ目ー

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「変わりたい」と願った声が いつしか私を追い越した 振り向けば 私の仮面を被った 見知らぬ何かが 嗤っていた 借り物の熱に 輪郭は溶け ほんとうの鼓動は 祭囃子の底 ひとつ またひとつ 遠退いて行く 浮かんでは消える影 誰かが望んだ私だけ 美しい切り絵のように 切り取られて行く 中身の無い言葉 祝詞のように並べ 借りてきた音へ 吹き込めば ほら それらしく生きてしまう 影だけが先回り 理想の顔で 私を名乗る ひ ふ み よ いつ む なな 音が鳴るたび 現と願いの境が裂ける 「代われ 代われ」と 声を重ねる 廻れ 廻れ 幽世神楽 仇し野の露音 骨まで踊れ 虚像の願い 祝詞に化けて 見えない何か 降ろしてしまう 「変わりたい」と願うたび 注連縄が私の首を締める 知らない誰かが 本当の名前 塗り替えてゆく 篝火の眩しさ 嗤うこの身は もう 依代 カ・ワ・レ カ・ワ・レ 最初はほんの少し 背伸びするための 一夜の面 されど 拍手の残響は 毒入りの蜜より甘く 足りないものも 痛む場所も 全て隠してくれた 綺麗に塗られた私のほうが 素顔の私より愛されて 胸に残った「変わりたい」は 閉じた内側を 爪で掻く 彼岸の私が 此岸の名を騙る ここにいる私が 塗り潰されていく 同じ歪みで手を打つたび 心より先 影だけが舞う 誰が誰を 踊らせている? 最初に欲しかったのは 神に選ばれる呪(まじな)いじゃない なのに私は 愛されたおもてを 剥がす痛みに 怯えて 返せ 返せ 私の声を 剥がせ 剥がせ 嗤う面 切れぬ注連縄 欠け続ける拍 踊れ 踊れと 骨が鳴る ひ ふ み よ いつ む なな—— 八つ目で息をするのは ダレ? 廻れ 廻れ 幽世神楽 仇し野の露音 血肉を巡る 中身のない祝詞に 喉を与えて 私は私を 追い出してゆく 「変わりたい」気持ちとは裏腹に 堕ちてく甘さへ 溶けて逝く 一人歩きした私の影が 鳥居の向こうで 手招きをする せめてその音を 私の名で 私の名で 鳴らして 迷い路の響きが木霊する