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零ミリのエーテル - Invisible Thereminvox -

V5.5

夕暮れの観測所 斜光の塵が舞う 真鍮のロッドが 冷たく空気を裂く 弦も鍵盤もない 木箱の前に立ち 指先を差し出せば 磁界が微かに揺れる   ヘテロダインの脈動 高周波のうねり 近づくほどに 高まるピッチの叫び ミリ秒の躊躇い 触れ合わない距離   真鍮のアンテナ 零ミリの寸前 触れずになぞる 不可視の境界線! 静電容量が 震わせるエーテル Thereminvox―― 虚空が咽び泣き 歌い出す!     手のひらを引けば 音量が沈み込み 左手のループが 呼吸を司る 触知できないのに 確かな熱さがある 見えない皮膚同士が 空間で交差する   百年の時を越え オシレーターは語る 人の手が触れぬ場所にこそ 純粋な サインの波形が宿るのだと   真鍮のアンテナ 空間を抱きしめて 触れないままで 全てを伝え切る! エーテルの海へと 溶けゆく周波数 Thereminvox―― 無接触の歌声が 響き渡る!