窓の向こうに ゆれる洗濯物 三枚めくった机のカレンダー 優しい陽ざしが手まねきしても 心だけが置いてけぼり スマホの中で笑顔のふたり 画面の春は平気なのに 外へ出たら すぐ襲ってくるんだ くしゃみとため息 春なんて愛せない 黄色い風が舞い上がる 肩を寄せて歩きたい キスもしたい でもできない 卒業式でもないのに 涙あふれて にじむ道 (ねえどうして) このマスクと臆病な胸 手放せない 駅前にはピンクの並木道 待ち合わせに五分早く着いた ポケットには予備のマスク三枚 ポーチの中に 薬の山 スマホの着信 外で会おう 既読はついた でも返事は止まる 花粉が怖くて踏み出せないんだ 情けないね ああ 春なんて愛せない 風が運ぶのは ときめきじゃない 笑い声も花の匂いも 涙ぽろぽろ ぼやけてゆく 写真越しの その奥にある 本当の顔を隠したくて (わかってる) このマスクと張りついた嘘 手放せない 「大丈夫?」って 差し出すティッシュ 「会えてよかった」って言ってくれた 君の気持ちが わたしの顔をくしゃくしゃにする 春だって愛したい 黄色い嵐の その先で 震えながら手を耳にあてて 白い壁が解き放たれる サクラサクでもないのに 涙こぼれて笑い合う (もう一回) このマスクと隠してた恋 手放したい