月曜日の夜は、街の色が少しだけ鈍い。 商店街のシャッターが半分閉まりはじめて、 コンビニの明かりだけがやけに白く見える時間。 その片隅で、彼女はギターを取り出す。 身長152センチ。 ギターを抱えると、少し大きく見える。 昔、彼女はハイトーンの歌姫と一緒にギターを弾いたことがある。 ステージの上で、 声が空を突き抜ける人。 その横で、彼女はただギターを弾いていた。 怒涛みたいな曲だった。 ハードロック。 メタル。 速すぎるフレーズ。 観客は歓声を上げていたけれど、 彼女はただ指板だけを見ていた。 あの頃の癖が、まだ残っている。 最近はジャズばかり弾いている。 複雑なコード。 ゆっくり歩くようなメロディ。 でも、指の奥にはまだ別のスピードが眠っている。 彼女はアンプをつける。 軽く鳴らす。 少しだけ歪む音。 完全なクリーンじゃない。 それが、ちょうどいい。 最初のコードは静かだ。 夜に溶ける和音。 そのあと、指が動きはじめる。 速い。 でも、慌てていない。 ジャズのラインの中に、 昔のメタルの速さが顔を出す。 指板の上で指が走る。 リフは正確で、 音は粒みたいに揃う。 聴いていると、不思議な感覚になる。 時間が少しだけゆるむ。 月曜日の夜なのに、 急がなくていい気がする。 ただの数分。 でも、その数分が妙に長い。 彼女は何も考えていない顔で弾いている。 たまに小さく笑う。 それだけで、空気が少し柔らかくなる。 最後の音が消える。 街はまた普通の月曜日に戻る。 でもほんの少しだけ、 夜の長さが変わった気がした。