
風鈴の音が ほどけた午後に 君の名前だけ 胸で鳴った 夏草ゆれる 坂道の先 白い雲だけ 急いでいた となりを歩く それだけなのに 手のひらだけが 熱をもつ 何でもないと 笑った声が 夕立まえの 匂いになる まだ小さな 芽のような気持ち 気づかれぬように 息をした 言いたいことは 増えてゆくのに 言える言葉は 減ってゆく 蝉の声さえ まぶしすぎて 君の横顔 見れなかった 夏が来るたび 君を好きになる 波のように 寄せては返す 胸の奥で 育つ青い葉を まだ君に 渡せないまま 好きだよなんて たった四文字が 空より遠く 揺れている 笑ってほしい そばにいたい それだけなのに 声にならない ラムネの瓶に 閉じこめた空 ビー玉みたいに 恋が鳴る 祭りの灯り 滲んだ夜に 君の袖だけ 追いかけた はぐれないよう 近づいた距離 触れそうでまた ほどけてく 名前を呼べば それで足りると 自分に嘘を ついていた 伸びてく影が 重なりそうで 一歩ぶんだけ 逃げてしまう 夕焼け色に 染まるくせに 心だけまだ 青いまま 夏が来るたび 君を好きになる 風の中で ほどけて満ちる 胸の奥で 育つこの花は まだ咲く場所を 探している 好きだよなんて 言ってしまえば 明日が変わる 気がして怖い 近くにいるのに 遠くて痛い このもどかしさも 君のせいだ 雨あがりの道に 光が跳ねた 君が笑うだけで 世界が少し 前を向いた この気持ちは 消えない もう蕾じゃ いられない 言葉にすれば 壊れそうで 言葉にしなきゃ 届かない 夏が終わるまえ 君に伝えたい 波の向こう 声を投げたい 胸の奥で 育ててきた花 今ならきっと 渡せるから 好きだよなんて 震える声で 空へほどけて 風になる 君が笑っても 困ってもいい この夏だけは 逃げたくない 風鈴の音が 遠くで鳴った 君の名前を そっと呼んだ

