1日目 目を覚ますと 見覚えのない部屋にいる 知らない天井 知らない壁 テーブルの上に 温かい味噌汁が一杯だけ置いてある ……なんで味噌汁? 外に出ようとしたけど どうやら出ることはできないらしい 鍵はない 窓は開かない まあ…… 今日は様子を見るか 2日目 電話が鳴っている 画面には 「自分」 って表示されている ……自分? でも そのスマホはテーブルの上に置いたまま 俺はここにいる じゃあ 電話してるのは誰だ 怖くて 電話は取らなかった ずっと鳴ってた なんなんだ ここは 3日目 午前3時 窓から見えるコンビニの駐車場に 女の子が一人いる アイスを食べながら 泣いている でも 泣いてる理由は 全然悲しそうじゃない 笑ってるみたいに泣いてる いや 泣いてるみたいに笑ってる? ……なんなんだ ちょっと怖くなってきた 4日目 朝起きたら 味噌汁が二杯あった 昨日は一杯だった 一杯だったよな ……いや 待て 昨日の味噌汁って 誰が作ったんだ? 俺は作ってない そもそも 俺は 腹減ってたっけ 5日目 今日は電話が鳴らなかった その代わり 部屋の外から 電話の音がした 廊下なんて なかったはずなのに ドアを開けた 廊下があった 長い廊下 ずっと先に もう一つドアがある そのドアの向こうから 俺の声がした 「もしもし」 ……出なかった 6日目 コンビニがなくなっていた 駐車場も 女の子も 全部なくなっていた 窓の外は 真っ暗だった でも ガラスに 誰かが映っている 俺だった ……たぶん 俺が手を上げると そいつも手を上げた 俺が手を下ろすと そいつは 笑った 7日目 朝 味噌汁が一杯 テーブルの上にある いつもと同じ でも今日は 湯気が出ていない 電話が鳴る 画面を見る 「自分」 今度は取った 「もしもし」 向こうから 俺の声がした 「もしもし」 …… 「誰?」 向こうも 「誰?」 …… 「ここ、どこ?」 向こうも 「ここ、どこ?」 …… しばらく黙って 向こうが言った 「今日で七日目」 …… 「知ってる」 「じゃあ、そろそろ出よう」 …… 「どこから?」 電話が切れた 部屋を見る ドアが開いている 初めてだった 外に出られる でも 出たくない だって 廊下の先に 俺が立ってる。