「あ、お疲れ様です!その件なんですけど」 耳に当てたスマホ 画面は真っ暗じゃない 絡まれないための 大根役者でしょ すれ違う人の前だけ 忙しい女なの 誰もいない夜道 ビニール傘を構えて 見えない敵を バッサリ斬り捨てる 角からお隣さん 慌てて傘を杖にする 「あ、こんばんは〜」って 心臓バクバクよ 美容室で言っちゃった 「この後カフェに彼氏と」って 「あ、お疲れ様です!その件なんですけど」 耳に当てたスマホ 画面は真っ暗じゃない 前髪切っただけで 帰って寝るだけなのに リア充のフリして どこへ向かってるのよ 部屋の明かり消して グラスに注ぐ炭酸 アルコール・ゼロパーで 酔ったフリする午前二時 五臓六腑に染みるわぁ なんて一人でつぶやいて 本当は甘いジュースが 飲みたいだけなのに 「あ、お疲れ様です!その件なんですけど」 真っ暗な画面に 今日も話しかけるの ビニール傘の剣は 下駄箱の隅っこ 誰も来ない部屋で 空っぽのグラスが 私の完璧な嘘を 見つめ返しているわ