嗚呼—— 煉瓦路地 ガス燈滲む宵 貴方の袖 移り香ひとつ 古書肆の奥 宛名なき文 解けぬ暗号 恋と呼ぶなら 謎解きならば 得意と嘯いた 貴方だけ——読めない 疑うたびに 愛しさが軋む 信じたいのに 堕ちてゆく円舞曲(ワルツ) 硝子越しの その微笑みは 共犯者(パートナー)か 罪人(エネミー)か ——嗚呼、貴方という迷宮 珈琲に落とす 角砂糖みっつ 数え慣れた癖も 今宵は証拠 銀座の往来 誰かと笑う背 振り向かないで——見つけないで 鹿鳴の夜会 仮面の舞踏 どの貌が——本当? 問うほど遠く 瞳が霞む 愛してるさえ 偽りに聴こえる モダンを気取る 女探偵(わたし)は 己の心こそ 解けぬまま ——嗚呼、恋という事件簿 帝都の空 月は口噤む 貴方が遺した 深紅の薔薇 棘の奥に 真実隠すなら 私は—— 頁をめくる 指先が慄(ふる)える 犯人は貴方か それとも私か 浪漫の霧が 晴れてしまう前に 答えて ——ねえ、 「真実を、教えて」 「——君こそ、僕を試しているのだろう?」