
毒杯の忠誠
幼き王は 玉座の上で 震える声を 押し殺した 父は本当に 殺されたのか あの宰相は 裏切り者か 誰も答えず 目を伏せるだけ 白き騎士らは 沈黙を敷く 監国査察官 冷たく告げる 古き罪など 問うべきでない されど問いは 弦へと落ちて シエラの胸で 震え始める これは王を 殺めし杯か いいや違うと 歌は告げたり 毒杯を 受けし王 罪を背負いし 静かな忠臣 ふたつの沈黙に 今 名を返さん 幼き命を 明日へ逃がすため 毒杯の底に 忠義は眠る 夜の奥にて 父王はひとり 幼き王子を 腕に抱いた この地がたとえ 支配されようと この子の命は 渡しはしない 聖堂騎士は 選べと迫る 血で染めるか 子を差し出せと 王は見ていた 炎の国を 泣けぬ民らの 砕けた明日を ただ退けば 子は奪われる ただ抗えば 民が焼かれる ならば王位を この子へ渡し 王という名で 守るしかない 毒杯を 受けし王 罪を背負いし 静かな忠臣 ふたつの沈黙に 今 名を返さん 幼き命を 明日へ逃がすため 毒杯の底に 忠義は眠る 宰相は膝を 床へとついて 王の言葉を 最後に聞いた 我が命令だ 余に毒を盛れ この子の明日を そなたに託す 震える指で 杯を満たし 忠臣は己の 名を捨てたり 王は微笑み 杯を受ける 父として王として 終わるために 罪人の名は 宰相に落ちて 裏切り者と 人は呼びたり されど彼は 何も語らず 王の最後の 命を守る これは王を 殺めし杯じゃない 幼き命を 明日へ逃がすため 毒杯を 受けし王 罪を背負いし 静かな忠臣 ふたつの沈黙に 今 名を返さん 城の広間に 歌は響いて 幼き王は 涙を落とす 父は逃げず 忠臣は裏切らず ふたりは君を 生かすため消えた 白き騎士らは ざわめき立ちて 監国査察官 怒りに震える その歌は異端 その声は魔女 閉ざした真実を なぜ呼び覚ます されどシエラは 弦を止めない 奪われた名を 返すそのため 呪いの名など 返しはしない 裏切りの名など 残しはしない 父の愛と 臣の忠義に 真実の名を 今返さん これぞ 名を取り戻す 歌

