
消えた童の赤い風車 長屋の隅に 落ちてた形見 「 助けて 」なんて 声は聞こえない ただ湿った風が 頬を撫でる 八百八町 親の泣き声 それが合図だ 仕事の時 握る薙刀 振り下ろせば 今宵の闇は 一段と深い 丑三つ刻 霧が這い寄り 大橋の袂、現れた影 人だかりさえ 消う失せた道 あの子の匂い 辿って往く 三途の河原 そこが根城か 嘘の結界を 蹴破り進む ここから先は 戻れぬ場所と 笑う髑髏を 踏み 抜いてやる 霧を切り裂け 鈍色の薙刀 手招く指先 叩き落として 妖の主、巨大な顎 正体見たり、未練の塊 奈落の底で眠る子ども まとめて現世 連れ戻すまで 袖を翻し、 私は舞う 人の弱みに 付け入る業か 闇に肥え太る河原の主 「 哀れ...な...だ 」 嘲る声に煙管の灰を 吹き付けてやる 地獄の沙汰も 銭次第だと 抜かす奴には 引導を渡そう 生死の境で 啖呵を切るよ 私の管轄(シマ)で 好きにはさせない 三途の川面が 激しく揺れて 月さえ隠した主の絶叫 逃がしはしない この事件(やま)だけは 心の闇を 光で暴け 引きずり戻した幼き命 江戸の夜明けを 背中で受けて 地獄の門ごと 葬って やる 橋の向こうで 一番鶏が鳴いた やれやれ、高くつくよ この掃除代は 煙管の煙が 朝焼けに溶け 私は独り 蕎麦でも手繰る 「 さあ、江戸の朝へ 」


