
雨上がりの庭の隅 葉っぱの裏に小さな命 世界の広さも知らないで 緑の道を歩いていた 花は遠くで揺れていた 風は名前も教えない 空を横切る青い影 あれは何だろうと見上げた ある朝 糸を紡ぎながら 小さな部屋を作り始めた 誰にも見えないその中で 昨日の形をほどいていく パピヨン パピヨン まだ見ぬ空へ 名前も知らない風の向こうへ 小さな命が夢を見る 羽のないまま夢を見る パピヨン パピヨン 聞こえるかい 世界はこんなに広いんだ まだ一度も飛んでいない その命に空が待っている 季節が庭を通り過ぎ 雨が何度も屋根を叩く 小さな殻は動かない 誰も変化に気づかない ある日ひびが走った 細い光が差し込んだ 震える身体を押し出して 初めて外へ顔を出す 濡れた羽は重たくて すぐには飛べそうになかった それでも朝の風の中 ゆっくり羽を広げていく パピヨン パピヨン 光を浴びて 昨日の姿を脱ぎ捨てた 青と金色の模様が 朝日の中で目を覚ます パピヨン パピヨン 急がなくていい 羽が乾くまで待てばいい 空はどこにも逃げないよ 風は何度でも吹くから やがて最初の風が来た 花びらひとつ舞い上がる 細い脚が枝を離れ 小さな影が空に浮いた 飛べたことに驚いた 世界が急に広がった 昨日まで見上げた花が 今はすぐそばで揺れている 蝶は自分の羽を見ない どれほど綺麗か知らない 誰かに褒められるためじゃなく ただ風の中を生きている パピヨン パピヨン 舞い上がれ 七色に揺れる陽射しの中 誰にも見えなかった日々が その羽を作っていた パピヨン パピヨン どこまでも 花から花へ風を越えて 美しいから飛ぶんじゃない 飛んでいる姿が美しい 小さな庭を振り返る 葉っぱの裏はもう見えない あの日見上げた青い影 今は自分が空に描く パピヨン パピヨン 風になれ 生まれたばかりの羽を広げ 世界にひとつの模様を乗せて 光の向こうへ飛んでいけ 夕暮れの花に降り立って 羽を静かに閉じたとき あの日と同じ葉の匂い 遠い庭から風が運ぶ パピヨン パピヨン 明日もまた 花は咲く

