Cyber Force 3rd Evolution楽曲募集中 詳しくはこちらのURLを参照 https://suno.com/song/b7a0861c-96d3-4526-800b-38f88dc81ce9 悪曲のプレイリストはこちら vol.1 https://suno.com/playlist/aed0b3e4-29c9-4333-9ed3-3d2475d4361b vol.2 https://suno.com/playlist/17410a4e-bb7f-4b25-8f77-c7c686404018 Cyber Force 3rd ストーリー https://suno.com/playlist/66e4584c-2bd3-47e6-91fb-f42f804c4642 前回はこちら https://suno.com/s/4aI10mKMNqVoBoXM --------------------------------------------- 《CINDER》 第三地点。 空間を覆う歪みは、赤黒く燃えていた。炎ではない。熱を持った亀裂そのものが、空中を走っている。地面は黒く炭化し、崩れた建造物の表面では、赤い光が血管のように脈打っていた。 その中心に、人型のホコロビが立っている。黒く焼け焦げた装甲。その隙間から、赤黒い炎が静かに漏れている。表情のない顔。眼にあたる部分だけが、熾火のように細く輝いていた。 そして、その周囲には三体の眷属。CINDERより一回り小さい、炭と炎で形作られた異形。四肢は細長く、先端は鋭く裂けている。三体はCINDERを守るように立ちながら、それぞれ異なる方向へ身体を向けていた。 正面。側面。後方。 最初から、二人を包囲するための配置だった。 エルフレア:「四体……」 リオナ:「中央が本体ね」 二人が同時に足を止める。CINDERの顔が、ゆっくりとエルフレアへ向いた。 CINDER:「確認した」 低く、乾いた声。燃え残った何かが、軋みながら言葉を発している。 CINDER:「赤のコア」 CINDER:「エルフレア」 エルフレア:「アタシを知ってるの?」 CINDER:「知っている」 CINDER:「怒りに任せ、敵を破壊した」 CINDER:「止めようとした者を拒絶した」 CINDER:「守るべき仲間へ、その炎を向けた」 エルフレアの指先が、小さく震えた。 CINDER:「ラクリアを壊しかけた」 その瞬間。赤い炎が、エルフレアの全身から噴き上がった。 エルフレア:「黙れッ!」 地面が爆ぜる。炎をまとったエルフレアが、一直線にCINDERへ踏み込んだ。同時に、三体の眷属が動く。正面の一体が両腕を広げ、エルフレアの進路を塞ぐ。 エルフレア:「邪魔よ!」 右拳。炎をまとった一撃が眷属の胸部を貫き、その身体を粉々に吹き飛ばす。だが、左右から残る二体が迫る。一体が腕を鞭のように伸ばし、エルフレアの脚へ絡みつく。もう一体が跳躍し、頭上から鋭い腕を振り下ろす。 リオナ:「エルフレア!」 魔力が弾けた。リオナが地面を蹴り、一瞬でエルフレアの横へ入る。強化された右腕が、頭上から迫った眷属を横殴りに吹き飛ばす。続けて身体を回転させ、伸びた腕を右脚で踏み砕く。 エルフレア:「助かったわ!」 リオナ:「前だけ見ないで!」 破壊されたはずの最初の眷属。地面へ散った黒い破片が、再び赤く発光する。炎が引き寄せられ、炭化した身体が組み上がっていく。数秒も経たないうちに、三体が元の位置へ戻っていた。 エルフレア:「再生するのね……!」 CINDER:「何度でも戻る」 CINDER:「お前と同じだ」 エルフレア:「……何ですって?」 CINDER:「怒りを失ったふりをしても、必ず元へ戻る」 CINDER:「お前はまた燃える」 CINDER:「また壊す」 CINDER:「また仲間を傷つける」 エルフレア:「黙れって言ってるでしょ!」 炎が広がる。エルフレアを中心に、巨大な火柱が噴き上がった。三体の眷属が一斉に飲み込まれる。CINDERも赤い炎に包まれる。 だが。 炎の向こうで、CINDERは立ったままだった。黒い装甲の表面を、エルフレアの炎が流れていく。吸収しているわけではない。耐えている。エルフレアの怒りが生み出す炎を、最初から知っていたかのように。 CINDER:「それだ」 CINDER:「その炎だ」 CINDER:「お前がラクリアへ向けた炎」 エルフレア:「違う!」 CINDER:「何が違う」 CINDER:「怒り」 CINDER:「憎しみ」 CINDER:「破壊」 CINDER:「お前を動かすものは、今も同じだ」 炎の出力が、さらに上昇する。その余波が周囲へ広がり、リオナの足元まで迫った。リオナは魔力障壁を展開し、炎を受け止める。 リオナ:「エルフレア!」 エルフレア:「分かってる!」 そう答えながらも、炎は止まらない。眷属が再び動く。一体が正面から突進。一体がリオナへ向かう。残る一体は大きく迂回し、エルフレアの背後を取ろうとしていた。 エルフレアは正面の一体へ拳を叩き込む。爆発。眷属の上半身が消し飛ぶ。そのまま振り返り、背後へ炎を放つ。 だが、射線の先にはリオナがいた。 エルフレア:「……ッ!」 炎が、わずかに逸れる。リオナのすぐ横を赤い熱線が通過し、背後の建造物を溶断した。 一瞬。エルフレアの身体が硬直する。ラクリアへ拳を振り下ろした記憶。倒れた仲間。止めようとした声。炎に包まれた視界。 エルフレア:「また……」 CINDER:「そうだ」 CINDER:「まただ」 CINDER:「お前は変わらない」 CINDER:「仲間が隣にいれば、いずれ巻き込む」 CINDER:「一人で戦えば、いずれ暴走する」 CINDER:「お前の炎が守れるものなど、何もない」 エルフレアの炎が揺れる。強く。弱く。不規則に。まるで、エルフレア自身がその炎を恐れているかのように。 その隙を、三体の眷属は見逃さない。左右から同時に接近。一本の腕がエルフレアの肩を捉え、もう一本が腹部へ突き刺さろうとする。 リオナが割り込む。右腕で一撃を受け止め、右脚で二体目の身体を蹴り上げる。だが、三体目が背後からリオナへ迫っていた。 エルフレア:「後ろ!」 赤い炎弾が、リオナの肩越しを通過する。眷属の頭部だけが吹き飛んだ。 リオナは振り返らない。残る二体を押し返しながら、静かに言った。 リオナ:「今のは、私には当たらなかった」 エルフレア:「……偶然よ」 リオナ:「違う」 リオナ:「あなたが外したの」 エルフレア:「でも、その前は……」 リオナ:「怒っていいわ」 エルフレアが、リオナを見る。リオナは眷属の腕を掴み、そのまま地面へ叩きつけた。 リオナ:「怖がってもいい」 もう一体の攻撃をかわし、魔力を込めた肘を胸部へ打ち込む。 リオナ:「過去を忘れる必要もない」 眷属が吹き飛ぶ。 リオナ:「でも、その怒りに選ばせないで」 エルフレア:「……」 リオナ:「次に何をするかは、あなたが決められる」 CINDER:「無意味だ」 再生した眷属が、再び三体揃う。 CINDER:「選択など存在しない」 CINDER:「怒りは破壊へ至る」 CINDER:「炎はすべてを焼く」 CINDER:「お前は再び同じことをする」 エルフレアの中で、何かが引っかかった。 また。再び。同じ。 CINDERは、先ほどからずっと同じ言葉を繰り返している。過去を突きつけているようで、その実、何一つ新しいことを言っていない。 エルフレアが一歩、前へ出た。炎はまだ赤い。怒りも消えていない。ラクリアを傷つけた記憶も、胸の奥に残ったまま。 それでも。 エルフレア:「……アンタさ」 CINDER:「何だ」 エルフレア:「さっきから、同じことばっかりね」 CINDER:「事実は変わらない」 エルフレア:「そうね」 CINDER:「お前は仲間を傷つけた」 エルフレア:「知ってるわ」 CINDER:「お前は暴走した」 エルフレア:「それも知ってる」 CINDER:「また繰り返す」 エルフレア:「それは、アンタが決めることじゃない」 三体の眷属が、再び走り出す。 エルフレアは動かなかった。炎を大きく広げることもしない。 正面から迫る一体。その右脚だけを、細い炎が撃ち抜く。体勢が崩れる。 側面から迫る一体。伸びてきた右腕だけを、炎が焼き切る。 最後の一体が跳躍する。エルフレアは半歩だけ身体をずらし、その攻撃をかわした。リオナが踏み込み、無防備になった眷属を殴り飛ばす。 一体。二体。三体。 二人の間を通り抜けようとした眷属だけが、正確に撃ち落とされていく。 炎の範囲は、先ほどより小さい。出力も低く見える。だが、無駄がない。リオナへ向かう炎は一つもない。 CINDER:「抑えているだけだ」 エルフレア:「違う」 CINDER:「恐怖で炎を弱めている」 エルフレア:「違うわ」 エルフレアは、自分の右手を見る。掌の上で、赤い炎が静かに揺れていた。 怖い。この力が。自分の怒りが。また誰かを傷つける可能性が。 その恐怖は消えていない。 けれど。 恐れているから捨てるのではない。怒りを否定するのでもない。これは自分のものだ。誰かを傷つけた過去も。それでも守りたいと思う気持ちも。どちらも、自分の中にある。 エルフレア:「アタシは怒ってる」 炎が、ゆっくりと右腕へ集まっていく。 エルフレア:「アンタがラクリアのことを何度も口にするのも」 さらに圧縮される。 エルフレア:「アタシの過去を、勝手にアンタの武器にしてることも」 赤い炎が細くなっていく。小さく。鋭く。一切の揺らぎを失いながら。 エルフレア:「全部、ムカついてるわ」 CINDER:「ならば燃やせ」 エルフレア:「燃やすわよ」 エルフレアは顔を上げる。そこにあったのは、暴走ではなかった。恐怖でもない。怒りを抱いたまま、次の一手を自分で選ぶ者の目。 エルフレア:「でも、何を燃やすかはアタシが決める」 鼓動が鳴った。一度。深く。 エルフレアの内部で、長く沈黙していた《鼓動-System-》が反応する。 新たな鼓動。 赤い炎が止まる。消えたのではない。完全に静止した。 周囲の熱が一点へ集まり、エルフレアの身体を包み込んでいく。CINDERが初めて、言葉を止めた。 エルフレアの足元に、白い光が走る。黒いサイバー素体の内側で、未知の構成情報が展開され始める。 そして。 静止した赤い炎の中心に。 一筋の青が灯った。 ―――続く https://suno.com/s/m4l9czrnCMGopT15