https://x.com/dVGBP2SIqE55447 五月雨 2026 朝のホームで 靴音が鳴る 同じ速さで 流れる背中 昨日と同じ広告だけが 新しい顔で 笑っていた ポケットの中 丸めたレシート 名前も知らない鳥の羽根 拾った理由も忘れたままで 今日も改札を抜けてゆく 大きな時計の裏側で 小さな僕らが回ってる ひとつ欠けても動く世界を 少しだけ見上げていた 歯車の向こうに 空があって 誰にも見えない雲が流れた うまく回れない僕のために 風だけ少し 待ってくれた 決められた円をはみ出して 知らない道へ転がってみよう 世界が僕を忘れていても 僕まで僕を 忘れないように 昼の窓から 見下ろした街 四角い箱が並んで光る 机の隅で冷めたコーヒーに 逆さの青空 浮かんでいた 誰かが決めた正解だけを 上手になぞってきたけれど 消しゴムのカスみたいな夢が まだ袖口に残ってる 急いで回れば回るほど 景色はぼやけてゆくから ほんの一秒 止まった僕に 遠くの匂いが届いた 歯車の向こうに 川があって 銀色の午後を運んでいた 名前も役目も脱ぎ捨てたなら 僕らは何になれるだろう 錆びついた夢をポケットに 知らない橋を渡ってみよう 明日の形が歪んでいても それならそれで 悪くないさ 街じゅうの時計が眠るころ ビルの谷間に草原が咲く 見たこともない白い獣が 信号の青を食べていた 僕はネクタイを風に放って 行き先のないバスを待った 来なくてもいい ここからなら 歩いてゆける 歯車の向こうに 空がある いつかじゃなくて 今ここにある 同じ速さで回れなくても 僕には僕の朝が来る 巨大な時計が止まらなくても 世界は勝手に続いてゆく それなら僕も 僕の速さで 名もない道を歩いてゆこう 誰にも見えない雲を追って 少し遠くへ 朝のホームで 風が吹いた いつもの電車をひとつ見送る ポケットの羽根が揺れていた それだけなのに 空が広かった