
継ぐ者の詩(うた) 筑紫澪
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V5.5
夕暮れ時 汚れたつなぎで帰る路地 隣のアイツは 腹をすかせたままの顔 貧しさなんて 言葉も知らずにただ笑い 泥だらけの靴で 明日を探していた 大人になって それぞれの道へ散った 黒いスーツに身を包んだあいつ 六法全書を盾にしたあいつ 黒板の前で声を枯らすあいつ 俺は選んだ 親父の背中を 油の匂い 鉄の温もり 継ぐ日々を どんな時も 守り抜いてくれた 皺だらけの手を 今も誇りに思う 「生んでくれてありがとう」なんて 照れくさくて 言えぬまま月日は過ぎた だけど今なら 空に向かって言えるよ あんたらの息子で 本当によかったと 泥にまみれて 命を燃やした あんたの強さを この手で守り抜く 父よ 母よ 見ていてくれよ 俺は今日も この道を歩いてゆく 鏡に映る 痩せた体がふと震える 病の淵で 死の影を横目に見た夜 そんな時でも 強気な女房が笑って 「負けたらあかん」と 俺の背中を叩いた 決して強靭な 体じゃないけれど 夫婦(ふたり)で越えた 荒波の数だけ 細くしなやかに それでも強く生きてきた 絆という名の 鋼(はがね)を抱いて 駆け抜けてきた この成長の時代 汗と熱気が 国を動かしていた いい時代だった 心からそう言える 命を燃やし 確かに駆け抜けたから 「生んでくれてありがとう」なんて 照れくさくて 言えぬまま月日は過ぎた だけど今なら 空に向かって言えるよ あんたらの息子で 本当によかったと 泥にまみれて 命を燃やした 父と母の強さを この手で守り抜く 巡る季節の その先へ向かって 俺は今日も この道を歩いてゆく 誇りを胸に この道を歩いてゆく


