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潮騒の坂道

港へ降りる細い坂道 潮の匂いを風が運ぶ ガス灯が揺れる石畳には 君の歩幅がまだ残ってる マリンタワーを見上げるたびに 照れた横顔 思い出すんだ 夏の終わりを知らないように 海鳥だけが空を渡った 汽笛ひとつ 夕暮れに溶けて 胸の奥まで響いてくる 季節は静かに変わるのに あの日だけまだ色褪せない ベンチに並んだ影の続きを 波が何度もさらっていく 君が笑えば港も笑って 僕が黙れば風だけ鳴いた 名前も呼べず見送った夏を 今日も坂道が覚えている 古い洋館 伸びる木漏れ日 木の窓越しの午後の光 遠く氷川丸が眠る岸辺で 時間だけがゆっくり流れる 帰り道には赤いバスより 歩くほうが好きだったね 何もない日が宝物だと 今なら少しわかる気がする 変わっていく街並みの中で 変われない景色がひとつある 君と見上げたあの夏空は 胸のどこかで息をしている 港に灯る明かりのように 消えそうで消えない想いがある 忘れることが優しさじゃない 抱いたままで歩けばいい 坂の途中で風が笑った あの日と同じ潮の香り 振り向けばきっと誰もいない それでもこの街が好きだから