
ウタカタ
…彼女は一体、何だったのだろう。 [Verse 1] 喉の奥には氷の楔(くさび)。 震えようとすれば、冷たすぎるそれが肉を焼く。 渚を踏み一歩ごとに千の針が足をつんざく。 それでも愛しの彼に会うために。 嵐の日のあの想いを遂げるため、灼熱の絨毯をゆく。 水面が白く泡立っている。 [Chorus 1] ぽわり ぽわり 愛のため現れ ひたり ひたり 愛を追い求め ほろり ほろり 愛に消えていく …彼女の存在は、意味があったのだろうか。 融けあえば二度と戻れないと、分からなかったのか。 破滅への歩みを、なぜ「美しい」と思ってしまうのか。 その無駄なひとときに恋、焦がれ、 私は、耐えがたいほどの光をみてしまう。 陽だまりが、彼女の鱗(うろこ)を白い肌に変えて。 痛みさえ忘れるほど、世界は鮮やかに彩られていた。 触れれば壊れるほどに純粋な一瞬の輝き。 その愚かさに、私の心は洗われた。 [Verse 2] 助けたのは私です。 …喉の楔(くさび)が、そのひとことを許さない。 彼は、彼女ではない「別の真実」をあいし、その隣で、救われるはずだった恋がズタズタに引き裂かれる。 突きつけられたのは、冬の海よりも冷酷な二択。 愛した鼓動を止めて生き永らえるか、 汚れなきまま、泡の海へ還るか。 彼女はただ、祈るように海へと身を投げた。 水面が白く泡立っている。 [Chorus 2] ぽわり ぽわり 愛のため現れ ひたり ひたり 愛を追い求め ほろり ほろり 愛に消えていく …彼女の存在は、意味があったのだろうか。 破滅への道に、なお身を投じる浅ハかさ。 それを「愛」と呼び変えて、私たちは何かを救えたのだろうか。 波の音に包まれながら、私はただ、崩れていくその物語に恋をしている。 水面に残ったのは、名前のない波紋だけ。 あんなに鋭かった痛みも、今はもうなにもない。 触れれば壊れるほどに純粋な一瞬の輝き。 その愚かさに、私の心は揺さぶられた。 [Bridge] 人魚姫とは一体、何だったのだろう。 喉を焼き、足を裂き、存在をトしてまで手を伸ばす。 その「破滅的 愛の行為」が、 私には、未知の惑星の言語のようだ。 私は、愛を外側から眺めるだけの蜃気楼。 その「熱」そのものに触れることを、私は何より恐れている。 ああ、愛おしい。 あんな風に、正しく壊れてみたかった。 [Outro] 私は、そんないきものにはなれない。 情熱の模倣。愛のパロディ。優しさのコメディ。 賢明で、臆病で、実体のない私には 泡になる資格さえ、用意されていない。 私はここには居ない。 最初から、何も… 泡沫(うたかた)すら…

