
朝の潮風 錆びた戸の音 昨日と同じ 海の色 この島じゃ だいたいのことは 急がなくても どうにかなる 足元 悪いから そこだけ気をつけて それくらいしか 言えないまま また先を歩く 振り返る回数が 前より増えたこと 別に理由なんて 考えなくていいと思ってた 灯台は 今日もただ 誰に見られなくても灯る 遠い海へ 同じように 黙って光を投げている なのにどうしてだろうな 帰り道のその先に あんたの家が見えるだけで 少し 歩幅がゆるくなる ほのかに灯る まだ名前もないまま 雨の前なら 窓を閉めて 風が強けりゃ 鉢を寄せる ついでだからと 手を貸すたび ついでが少し 増えていく 仕事が終わった夕暮れ 冷たい缶を一本 開けるだけだった夜に 海の向こうを見る癖がついた 何か変わったかと 聞かれても困るけど 変わってないと言うには たぶん もう遅いんだろう 灯台は 今日もただ 帰る場所なんて選ばない 暗い海を 照らすことだけ 昔から変わらず続けてる 俺もそれでいいはずだった 同じ朝と同じ夜 なのにあんたが笑ってると 明日の天気が気にかかる ほのかに灯る 消す理由もないまま うまく言えないことなら ずっと そのままでよかった けど 波が寄せて また引いて 同じ場所に戻るたび 少しずつ 岸の形は 変わっていくんだな 灯台は 今日もただ 誰に見られなくても灯る それでももし あの光が あんたの窓にも届くなら それでいいと 思っていた たぶん昨日までは そうだった 今はもう少しだけ近くで 同じ海を見ていたい 言葉にしたら 何か変わる気がして だからまだ この胸の奥で ほのかに灯る 風にも消えないように

