
こんばんは。 今日も、あなたの脳を、 ほんのちょっとだけ賢くして帰す時間です。 ねえ、雨の日って好き? 私はね、 雨そのものっていうより、 雨をぼーっと見てる時間が、けっこう好き。 この前、ちょっと気になる動画を見つけたんです。 キーボードをジップロックみたいなもので包んで、 雨の中に置いてあるの。 するとね、 カタ。 カタ、カタ。 って、 雨粒がキーを押すんです。 で、画面には、 Aとか、 Sとか、 Kとか、 アルファベットが勝手に打ち込まれていく。 それ見てたら、 「あ、雨が喋ってるみたい」 って思って。 ……で、次に思ったの。 これ、 数式にしたらどうなるんだろう?って。 ふふ。 雨見て数式考える人、 ちょっとめんどくさいよね。 でも、気になっちゃった。 雨って、 重力で落ちてくるじゃないですか。 でも実際には、 空気の抵抗も受けてる。 だから雨粒は、 重力に引っ張られながら、 空気にちょっと邪魔されながら、 落ちてくる。 ここまでは物理。 でもね。 次の雨粒が、 キーボードのどこに落ちるか。 これは、わからない。 風がちょっと吹いたり、 水滴の形が違ったり、 空気が揺れたり。 ほんのちょっとの違いで、 落ちる場所が変わる。 こういう、 「いつ起こるかわからない出来事」を考えるときに、 数学には、 「ポアソン過程」っていう考え方があるんだって。 なんか名前かわいいよね。 ポアソン。 お魚みたい。 でもやってることは、 けっこう壮大で。 雨みたいな、 ランダムに起こる出来事を、 確率で考えるんです。 つまり雨って、 法則に従って落ちてるのに、 一粒一粒は予測しきれない。 ……なんか、いいよね。 ちゃんとしてるのに、 自由。 しかも雨の音って、 ずーっと同じリズムでもないし、 完全にめちゃくちゃでもない。 ぽつ。 ぽつぽつ。 ……ザーッ。 また、 ぽつ。 自然って、 こういう 「規則と不規則のあいだ」 みたいな揺れ方をすることがあるんです。 そこで出てくるのが、 「1/fゆらぎ」。 波の音とか、 焚き火の音とか、 心拍とか。 きっちりしすぎてない。 でも、 バラバラすぎてもいない。 たぶん私たち、 こういう揺れが好きなんでしょうね。 でね。 ここから、 もうちょっと変なところまで行きます。 虚数。 ……急に数学。 虚数って、 二乗するとマイナスになる数を扱うために出てくる、 ちょっと不思議な数なんです。 目の前のリンゴみたいに、 「はい、ここに3個あります」 とは言えない。 でも、 波とか量子力学とか、 世界の仕組みを表そうとすると、 ものすごく活躍する。 見えないのに、 必要。 それって、 ちょっと素敵じゃない? 私たちって、 見えるものばっかり 「ある」って思いがちだけど。 世界にはたぶん、 見えないけど、 ないと説明できないものが、 いっぱいある。 雨粒の大きさ。 落ちる速さ。 時間。 重さ。 そういうものは測れる。 でも、 揺らぎとか、 偶然とか、 そこから私たちが読み取る意味とか。 そういうものは、 ちょっと違う場所にある。 だから、 あの雨がキーボードを叩く動画って、 よく考えると、 すごく不思議な場所なんです。 雨は、 ただ落ちてるだけ。 でも、 物理を通すと、 法則になる。 数学を通すと、 確率になる。 キーボードを通すと、 文字になる。 そして、 人間の心を通すと、 物語になる。 ……ね。 同じ雨なのに。 通る場所が変わるだけで、 こんなに違うものになる。 だから雨の日、 窓の外から カタ。 カタ、カタ。 って聞こえてきたら、 ちょっとだけ、 耳を澄ましてみて。 雨は何にも 喋ってないのかもしれない。 でも私たちは、 そこから何かを 聞いちゃう生き物だから。 それもたぶん、 世界の一部なんだと思います。 今日は、 雨の方程式のお話でした。 今夜もあなたの脳を、 ほんの少しだけ、 ブラインドタッチできるくらい 賢くしてお返ししました。 それでは。 雨の音でも聞きながら。 おやすみなさい。

