部屋に案内され  一粒の薬を手渡された。 殺風景な狭苦しい部屋だった。 言われるまま椅子に腰かけ  言われるまま薬を飲んだ。 背後でドアが閉められ  施錠される音がした。 ひとり部屋に残された。 正面の天井近く  設置された看視カメラに気づく。 つい笑顔を作ってしまい  すぐに自己嫌悪に陥る。 やがて、奇妙な音が聞こえてきた。 「アア、アアア、アアアアア」 感心してしまった。 音楽が聞こえる薬だったとは。 いやいや。 違う、違う。 これは自分の声だ。 なぜか自覚せずに発声している。 ふと見下ろすと  そこに誰かの頭があった。 一脚しかないはずの椅子に  一緒に腰かけている。 どことなく横顔に見覚えがあった。 目が合った。 とまどいの表情は隠せない。 「アア、頼むから  そんな目で、見ないでくれ」 どちらの声なのか  どちらも区別できなかった。