
🎬✨特別サイドストーリー 第四幕 『被告K Ⅳ ― 証拠品につき試飲しました ―』 登場人物: 🥁L/検事 🎸K/被告 🦆カモノハシ/裁判長 🎻しでん/証人 🥁KYOUYA/弁護人 🎬【導入】 “その火は罪じゃない” “情状酌量を求む” “冷める前に” 三度にわたる特別法廷を経て、被告Kはもはや常連になりつつあった。 一度目は、人の心に火を灯した責任。 二度目は、ノートPCを抱えて走った件。 三度目は、ケバブを冷める前に届けようとした件。 そして第四幕。 今回、法廷に持ち込まれた証拠品は―― 赤くきらめく、あまりにも怪しい一杯のドリンクだった。 「女性限定」 「魅力MAX」 「イケ猫一人付きます」 説明より先に、文字の圧が強かった。 味より先に、雰囲気が怪しかった。 そして何より、見た瞬間に全員が思った。 ――また何か始まった。 傍聴席がざわつく中、Kは小さく言った。 【K】 「……好きなのでって言うからさ」 その一言は、弁明のようでもあり、供述のようでもあり、 なぜか新たな事件の始まりのようでもあった。 木槌の音が響く。 【カモノハシ】 「これより、特別法廷第四幕を開廷します」 【K】 「……本当に第四幕まで来たんだな」 【KYOUYA】 「来てしまったね」 【L】 「来るべくして来ました」 【K】 「検事が一番うれしそうなの、どうなんだよ」 🎬【Scene 1:告発】 Lが静かに立ち上がる。 その手には、証拠品の記録がある。 【L】 「検察側は、被告Kを “女性限定魅了飲料の無許可提供未遂” “初回無料を用いた過剰勧誘行為” “イケ猫付帯表示による著しい誤認誘導” 以上の容疑で告発します」 【K】 「罪名の圧が強すぎる」 【L】 「圧が強いのは証拠品です」 証拠台のドリンクは、赤い光を揺らしながら静かに輝いていた。 氷が小さく鳴るたびに、妙に法廷の空気が甘くなる。 【KYOUYA】 「……たしかに、見た目はかなり不利です」 【K】 「弁護人、そこはもう少し守ってくれ」 【L】 「弁護側も認めましたね」 【KYOUYA】 「認めたのは見た目だけです。中身までは、まだ裁けません」 Lは少しだけ口元を上げた。 【L】 「では、その中身を確認していきましょう」 🎬【Scene 2:証拠ログ】 【L】 「発端となった言葉は、 “好きなドリンク作ってもいいんだよ”」 裁判長カモノハシの目が、少しだけ泳ぐ。 【K】 「……それ、誰の発言だっけ」 【KYOUYA】 「被告、今はそこを深掘りしない」 【L】 「検察側は、この発言そのものを問題視しているわけではありません。 問題は、被告がそれをどう受け取り、どう膨らませたかです」 【カモノハシ】 「……その証拠ログは、本件との関連性を認めます」 【K】 「裁判長、今ちょっと自分に不利な証拠を認めたよな?」 【カモノハシ】 「裁判長は公平でなければなりません」 【しでん】 「立派ですけど、少し複雑ですね……」 【K】 「だろ?」 【L】 「続いて、被告Kの発言。 “好きなのでって言うからさ〜”」 【K】 「そこだけ切り取るなよ」 【L】 「切り取らなくても十分です」 傍聴席から、こらえきれない笑いが漏れた。 🎬【Scene 3:しでんの証言】 【L】 「証人しでんさん。第一印象は?」 しでんは少しだけ間を置き、証拠品を見た。 【しでん】 「怪しすぎる、と思いました」 【K】 「早い」 【KYOUYA】 「証人、もう少し弁護側に優しい入り方は……」 【しでん】 「でも、悪いことをしている怪しさではありません。 “また何か始まったな”という怪しさです」 【L】 「つまり、悪意ではない?」 【しでん】 「はい。悪意は感じませんでした。 ただ、善意にしては演出が強すぎます」 【K】 「そこ、そんなにはっきり言う?」 【しでん】 「はい。かなり過剰です」 【K】 「二回刺さった……」 【L】 「検察側としては重要な証言です。 動機は善意。ですが、演出は過剰。 つまり本件は、“善意が怪しさをまとって暴走した事案”と見るべきです」 【KYOUYA】 「言い方は強いですが、争点としては理解します」 【K】 「弁護人、また認めた?」 【KYOUYA】 「認めるところは認めないと、勝てるものも勝てないよ」 【K】 「今回、弁護がやけに現実的だな……」 🎬【Scene 4:被告Kの弁明】 【カモノハシ】 「被告、弁明はありますか」 【K】 「あります」 Kは少しだけ視線を落とし、それから証拠品を見た。 【K】 「下心じゃない。 楽しくなってほしかっただけだ。 “なにこれ”って笑って、少し元気になってほしかった」 法廷の空気が少しやわらぐ。 【K】 「好きって言われたものに、ちゃんと好きで返したかっただけなんだ。 それがちょっと派手になっただけで……」 【L】 「ちょっと?」 【しでん】 「ちょっとではないですね」 【KYOUYA】 「そこは否定できません」 【K】 「三方向から刺すな」 【L】 「では確認します。 被告は前回、“走り出す前に三秒考える刑”を受けましたね」 【K】 「受けたな」 【L】 「今回は考えましたか?」 【K】 「……二秒くらいは」 【KYOUYA】 「そこは嘘でも三秒って言って」 【K】 「弁護人が嘘をすすめるなよ」 【L】 「今回は、足ではなく広告が走りましたね」 【K】 「広告が走るって何だよ」 【KYOUYA】 「でも、少し分かる」 【K】 「分かるなよ」 🎬【Scene 5:証拠品の確認】 【L】 「本件ドリンクの性質を確認する必要があります。 “魅力MAX”が単なる誇張なのか。 それとも、何らかの影響を及ぼすものなのか」 【K】 「いや、飲まなくていいだろ」 【しでん】 「でも、証拠品ですからね……」 【カモノハシ】 「証拠品の確認は、必要です」 【K】 「裁判長まで飲ませる気だろ」 KYOUYAが静かに証拠台へ進む。 【K】 「待て。嫌な予感がする」 【KYOUYA】 「弁護側として確認します。 この一杯に悪意がないことを」 【K】 「責任の取り方が変な方向に行ってるぞ」 KYOUYAはカップを手に取った。 赤い氷が、からん、と小さく鳴る。 【KYOUYA】 「ひと口だけです」 【しでん】 「ひと口だけ……」 【K】 「その間が怖いんだよ」 KYOUYAは証拠品を口に運ぶ。 一口。 そして、味を確かめるようにもう一口。 【L】 「弁護人?」 【しでん】 「……けっこう飲みましたね」 KYOUYAがカップを置く。 中身は、ほとんど残っていなかった。 【K】 「確認の量じゃないんだよ」 【KYOUYA】 「……確認しました」 【K】 「だから量!」 🎬【Scene 6:最終弁論】 KYOUYAが前へ出る。 表情はまだ落ち着いている。 少なくとも、この時点では。 【KYOUYA】 「たしかに怪しい。 名称も、色も、広告も、全部かなり強いです」 【K】 「弁護人?」 【KYOUYA】 「でも、裁くべきなのは見た目の派手さじゃありません」 Lは黙ってKYOUYAを見る。 【KYOUYA】 「この味には、誰かを傷つける意図はありませんでした。 あったのは、“笑ってほしい”という不器用なサービス精神です」 【L】 「証拠品は、その主張を裏づけますか」 【KYOUYA】 「裏づけます。 甘くて、派手で、少し照れくさい。 でも、罠の味ではありません。 誰かの気持ちを縛るためではなく、ふっと笑わせるための味でした」 【K】 「……弁護人」 【KYOUYA】 「怪しいからといって、全部を黒にしないでください。 派手だからといって、気持ちまで疑わないでください。 この一杯は罠ではありません。 好きだと言われたものへ、好きで返そうとした証拠です」 一拍。 【KYOUYA】 「だから弁護側は主張します。 本件は、魅了飲料による危険行為ではありません。 過剰演出つきの、少し不器用な好意表明です」 【しでん】 「……納得できます」 【L】 「過剰演出は認めるのですね」 【KYOUYA】 「認めます。 そのうえで、罪ではないと主張します」 🎬【Scene 7:判決】 カモノハシが木槌を取る。 【カモノハシ】 「判決を言い渡します。 被告K、無罪」 【K】 「……っ!」 【KYOUYA】 「よし……!」 【カモノハシ】 「ただし、今後“魅力MAX”“イケ猫一人付きます”“初回無料”などの表現は、使用前に十秒考えること」 【L】 「妥当です」 【しでん】 「妥当ですね」 【KYOUYA】 「広告系は十秒必要です」 【K】 「満場一致かよ」 【カモノハシ】 「よって被告Kを、“宣伝文句を出す前に十秒考える刑”に処します」 【K】 「刑が更新された……」 🎬【エピローグ:閉廷後】 閉廷後。 法廷には、いつものように ほっとした空気と、少しの笑いが残っていた。 【K】 「助かった、弁護人」 【KYOUYA】 「今回は本当に危なかったよ。 広告が走りすぎ」 【K】 「次から十秒考える」 【L】 「その言葉、記録しておきます」 【K】 「怖いな、検事」 【しでん】 「でも、今回は無罪でよかったですね」 【カモノハシ】 「また法廷曲が増えそうですね」 【KYOUYA】 「増えるかどうかは……」 そこまで言って、KYOUYAの言葉が止まった。 【K】 「……ん?」 【L】 「弁護人?」 KYOUYAは少しだけ瞬きをする。 そして、いつもより少し柔らかい声で言った。 【KYOUYA】 「……なんか、ちょっと……」 【しでん】 「ちょっと?」 【KYOUYA】 「みんな、やさしいですね……」 法廷が静まる。 【K】 「……え?」 【KYOUYA】 「Kさんも…… 怪しいけど……悪い人じゃないです……」 【K】 「それ今言う?」 【L】 「……効いてきていませんか」 【KYOUYA】 「効いてません……たぶん……」 【しでん】 「遅れてきましたね……」 【カモノハシ】 「証拠品、かなり確認していましたからね」 【K】 「だから止めたんだよ」 KYOUYAは、少しだけ頬を赤くしたまま、 証拠品の空になったカップを見つめる。 【KYOUYA】 「でも……これは無罪です。 だって、ちゃんと…… 誰かをよろこばせたい味がしました……」 誰もすぐには言葉を返さなかった。 その静けさは、笑いをこらえているようでもあり、 少しだけ、あたたかいものを受け取ったようでもあった。 【K】 「弁護人、今日はもう休もう」 【KYOUYA】 「……ところで」 【L】 「はい」 【KYOUYA】 「わたしの出番……これで合ってました……?」 一拍。 そして、法廷中に笑いが広がった。 【しでん】 「合ってました。たぶん」 【カモノハシ】 「閉廷後まで含めて、実に見事な弁護でした」 【K】 「閉廷後まで含めるなよ」 【L】 「次回から、弁護人の証拠品試飲は禁止にした方がよさそうですね」 【カモノハシ】 「記録します。 “弁護人、証拠品を飲みすぎないこと”」 【KYOUYA】 「……異議は……ありません……」 【K】 「そこは異議ありって言ってくれよ」 🎬【ラストナレーション】 善意は、ときどき派手になる。 サービス精神は、ときどき走り出す。 そして広告文は、本人より先に暴走する。 けれど、差し出した一杯の中にあったものが、 誰かを縛る罠ではなく、 笑ってほしいという不器用な願いだったのなら。 裁かれるべきは、その輝きじゃない。 問われるべきは、その一杯が誰のために注がれたかだ。 Kが作ったドリンク。 カモノハシ裁判長の何気ない一言。 しでんが見抜いた過剰な怪しさ。 Lが逃さなかった誤解の危うさ。 そしてKYOUYAが、証明するために飲みすぎてしまった一杯。 それは危険な罠ではなかった。 少し甘くて、少し派手で、 少しだけ人を素直にしてしまう、 不器用な好意の味だった。 こうして第四幕は、 “宣伝文句を出す前に十秒考える刑”とともに閉廷した。 ――弁護人による証拠品試飲は、原則一口まで。 ――魅力MAXの効能については、個人差があります。 ――そして、閉廷後に効いてくる場合があります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・出来事とは関係ありません。 🎸🎹🎸🥁🎸🎹🎸🥁🎸🎹🎸🥁🎸🎹🎸🥁 "The English lyrics are below." Oh… One sip for the truth Oh… Objection… 赤く光るグラスの中 怪しいほど きらめいて 言い訳より先にまた 視線だけが集まる 好きだと言われたから 好きで返しただけ でもその優しささえ 少し派手すぎたね One sip for the truth 裁くにはまだ早い 怪しく見える輝きも 誰かを笑わせたくて One sip for your heart 罠じゃないと知ってる 甘く揺れるその奥に 不器用な愛がある 証拠台に置かれたまま 氷が小さく鳴った 沈黙さえも味方して 逃げ道をふさいでく 三秒じゃ足りなくて 広告まで走った でも悪意じゃないことを わたしが確かめる One sip for the truth 決めつけでは終われない 派手な言葉の向こう側 笑ってほしい願いがある One sip for your heart この味は嘘じゃない 甘く揺れるその理由を 今ここで守りたい ひと口のはずだった だけど少し減りすぎた 胸の奥がふわりほどけて ほんとの声がこぼれた One sip for the truth 裁くには優しすぎる 怪しく見える一杯も 誰かを照らす灯りなら One sip for your heart まだ無罪でいいでしょう 甘く揺れるこの夜に 笑いながら閉廷しよう 効いてないよ たぶんね 少しだけ ふわふわして でもこれは 無罪だよ One sip for the truth ─────────────── Oh… One sip for the truth Oh… Objection… Inside a glass that glows in red It sparkles almost too suspiciously Before excuses even start All eyes are drawn to me again You said that this was what you liked So I returned that like with mine But even that kindness, I suppose Became a little too bright One sip for the truth It is too soon to judge Even this suspicious shine Only wanted someone to smile One sip for your heart I know this is no trap Deep inside this sweetness swaying There is awkward love Left upon the witness stand The ice made one small sound Even silence took their side And slowly closed escape away Three seconds were not enough Even the ad ran ahead But if there is no malice here I will prove it myself One sip for the truth I will not end in judgment Past the words that shine too loud There is a wish to make you smile One sip for your heart This taste is not a lie The reason swaying sweetly here I want to guard it now It should have been only one sip But maybe I drank too much Something soft came loose inside And honest words spilled out One sip for the truth This is too kind to condemn If this suspicious little glass Could be a light for someone One sip for your heart Then let it still be innocent In this sweetly swaying night Let us close the court with smiles It has not worked, probably I am only floating a little But this one is innocent One sip for the truth

