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思ってた大人じゃない

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V6

子供の頃に見てた三十歳は もっと何でも知ってる人だった 迷わず仕事を選んで 好きな人と暮らして 休日には少しくらい 余裕があると思ってた 現実は朝から 靴下を片方探して 電車に滑り込んで 昨日と同じ席を目指す 昼休み 久しぶりに開いた写真には もう会わなくなった奴らが 当たり前みたいに隣にいた みんな今 どこで何してるんだろう 思ってた大人じゃない まだ答えなんて持ってない 間違えた日の帰り道は コンビニでちょっと高いものを買う それくらいで機嫌を直して 明日も仕事へ行く 格好よくはないけど こんなふうに今日まで ちゃんと生きてきた 友達の名字が変わった 「子供が生まれました」 画面の中で笑ってる おめでとうって送ったあと 部屋が少し静かになった 羨ましいのかな 寂しいのかな 自分でもよく分からない 誰かの幸せを 素直に喜びたいのに その横で勝手に 自分の人生を採点してる 何歳までに結婚して 何歳までに落ち着いて そんな予定表 書いた覚えもないのに 遅れてる気がするのは どうしてなんだろう 思ってた大人じゃない まだ平気なふりも下手なまま 給料日の夜だけ 少し強くなった気がして 次の日 残高を見て笑う 夢なんて言葉を 口にするのは照れるけど 諦めたわけでもない 母さんから電話が来た 「ちゃんと食べてる?」 またそれかよって笑った 切る間際 昔より少しだけ 声が小さく聞こえた 次の休み 帰ろうかな 理由なんて それくらいでいい 僕らはいつから 大人になったんだろう 初任給をもらった日? ひとりで部屋を借りた日? 誰かとの最後を 受け入れた日? それとも 泣いてる場合じゃないって 涙を飲み込んだ日? たぶんどれも違う 大人になる瞬間なんて なかったのかもしれない 思ってた大人じゃない それでも悪くないと思えた 分からないことを 分からないまま抱えて それでも誰かを心配したり くだらないことで笑ったり たまには逃げたり また戻ってきたり 完璧じゃない今日を 何度も繰り返して 気づけばここまで来た 十年前の僕が 今の僕を見たら がっかりするかな いや たぶん最初に聞くんだ 「楽しい?」 少し考えて 僕は答える 「まあまあ」 それからもう一度考えて 「でもさ 思ってたより 悪くないよ」