[Verse 1] 白鯨。 その存在に、世界の怒りを載せた男がいた。 波が荒れても、ただ真っ直ぐな視線。 食事も、眠りも、ふねの軋みさえ薄れていく。 目に映るのは、眩むほどの大きな恋人。 [Verse 2] きっと男は、それを憎んでいただけじゃない。 あまりに広すぎる海を、ひとつへ縫い止めたかった。 散らばる世界を、あの背中へ収束させるように。 だから、他のものは薄れていった。 捨てたのではない。 ただ、それ以外が不純物になった。 もしエイハブの胸が大砲だったら、 自分の心臓を撃ち込んだ。 [Chorus 1] White whale, white wave White bone in the spray White heat, white line Nothing left to drain White whale, white flame White eye, white frame All the rest fades out Only one remains モビーディック。 それだけが揺るがない。 ひとつだけを見て、 壊れるところまで進める。 それはきっと、 幸福に近い。 [Verse 3] 飛沫。 濡れたロープが、掌の皮を剥いでいく。 誰かが叫び、誰かが海へ落ち、船は何度も 傾きながら進んでいく。 男は、片足を引きずったまま、それでも前へ出る。 波の向こうで、あの巨大な影が浮かび上がる。 そのたびに、甲板の空気は引きしまる。 恐怖より先に、何か熱いものが人を動かしていた。 [Verse 4] 最初はきっと、怒りだったのだろう。 奪われた脚。苦しみ。海への憎しみ。 けれど、長く見続けすぎた。 だから最後には、もう理由など残っていなかった。 復讐も、恐怖も、願いさえも削れ落ち、 ただ、あのシルエットだけが残った。 たぶんエイハブは大きな銛だったのだ。 自分自身を撃ち込んだ。 [Chorus 2] White whale, white wake White smoke in the dark White jaw, white mast Cut the whole world apart White whale, white name White storm, white grave All the rest goes quiet All the rest decays モビーディック。 それだけが目を逸らせない。 白に取り憑かれた男は死んだ。 それなのに、 今も誰かの胸を 静かに焦がしている。 [Bridge] エイハブ船長。 あなたを沈めたのは、白いクジラではない。 止まることのない、ひとつの衝動だ。 だから、あの結末は何度やっても変わらない。 破滅で終わりながら、どこか完成している。 そして今も、おそらく未来も、人の胸を穿ち続けている。 きっと、あの熱量にあてられたからだろう。 [Outro] そこまで辿り着けるだろうか。 世界を霞ませるほど、ひとつだけへ傾いて。 狂うほどの熱を、持てるだろうか。 いや、物語になりたいわけじゃない。 ただ、あれほどの衝動が、少しもこの身に 宿らないのだとしたら、それは少し、 …少し、静かすぎる。