私は九月に死にたい 青く高い空にコスモスの花 暑くも寒くもない朝に そっと息を引き取るの 稽古終わりの楽屋の中で 君はそう言ったっけ それって誰の台詞なの? 煙草を噴いて笑ったよぼくは 狭いアパート 陽の差さない窓 四角い空を眺めながら バイトに追われ 舞台に追われ 繰り返す毎日 ペンキまみれで作った大道具 仕込みの途中で台詞を試す主役の君を 袖から笑う それがいつものぼくさ 開演前には客席を数えて 知り合い抜いたら何人だとか そんなことばかり気にしてた 売れないぼくらの小さな舞台 今日のセットは君のもの 花だってずいぶん豪華だね 見なよ 客の少ない劇場が今日は満席...黒字だよ 黒い衣装に決められた席 順序どおりに前へ出て 頭を下げてまた戻る みんな妙に静かだね 君の嫌いなあいつまで 今日はずいぶん湿っぽい こんなの見たら 君ならきっと袖で何か言うんだろうな そろそろぼくの出番だね 静まった舞台に 決め台詞をあげる 誰からも愛されたあなたは いつも明るく 周囲にも優しく 気配りを欠かさない 故人は...コジンは...コジンは... ...笑ってもいい?...だめだよね これはやっぱり君じゃない 君はステージで笑ってくれよ ぼくらみんなの下手な演技を 舞台の外は秋晴れの九月 コスモスの群れに寝転がれば 青く高い空に 君だった煙が立ち昇っていく 暑くも寒くもない日の 静かな夕暮れ 今ならぼくも笑ってもいいかな? ...笑ってもいいかな?


