
コーヒーの香り☕️ -Lyrics- オレンジ色に染まる部室 低い光がまりちゃんの ほっぺを照らしている しばらく放置された 学祭の小道具たち 最後のガラクタを 段ボールに押し込んだ ラベンダーがほのかに香る すすけたりんごのクッション 休む光を置いたまま 古い扉にカギをかけた ポプラの大きな落ち葉 長い影をよけながら門に向かう 暖色に映るガラスの建物から 葉月先輩がちょうど降りてきた 手をぶんぶん振りながら まりちゃんは駆けだした 私もすぐに後を追う 先輩は最後の一段を ぴょんと降りて 私たちを受け止めてくれた 三人で駅の方に並んで歩く シャッターのアート 醤油ラーメンの換気口 ねこの室外機 まりちゃんの声が反射する いつもの風景を抜ける 特に選ばず 洋食チェーンに入る 席はまだ空いている 窓際に案内された 窓からバイト先の 歯科医院が見えた 明日はバイトの日だ 店員さんが 葉月先輩を ちらちら見ていた ちょっと得意になった 私はドリンクバーで エスプレッソを押す すぐにコーヒーの香りが 立ち込める 隣でまりちゃんは ボタンを次々押して オリジナルドリンクを 抱えて席に戻る 葉月先輩も来て アイスティを注ぐ 私はまりちゃんの創作を 笑って報告しながら 席に戻る 湯気の立つ皿が並んで 赤いパスタをほおばるまりちゃん 口元を見て 小さなおしぼりを渡す 私は辛味チキンをつまんだあと 指先を持て余していた 葉月先輩は しゃべりながら 自分のおしぼりを 私の前に置いてくれた 先輩の春からの研究室 コーヒーメーカーがあって 雨漏りで書類が濡れるという ハーブティを飲みながら笑う先輩 部室相変わらずでしょと笑われて まりちゃんと目を合わせる いたずらっぽい笑顔で 「きれいですよ」と声を揃えた まりちゃんが前のめりで話し 葉月先輩が顔を傾けて笑う 私はコーヒーをちびちび飲む 春、二年後 雨漏りの教室で 今日と同じ香りに満ちる朝 壁紙の天使を ぼんやり見ていた

