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般若姫の魂

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V6

苦しんでいる命 放っておけぬ魂 我が故郷に流れている 般若姫という高貴な娘 豊後国に生まれたり 姫の父母は純粋無垢 父はしがない炭焼き男 母は痣のある都の女 二人は品定めをしない 相手の存在まるごと愛する 神のお告げに従って そんな夫婦を神は嘉する 富と名声、美しい姫に恵まれる ついには皇子にも見初められ 彼は己の実力を示す 再び神のお告げに従って 上洛する姫は 我が故郷で嵐に遭う 多くの水夫たちが 海の藻屑となった 姫の心は人の痛みを感ずる できる限り亡骸を弔い 一心に観音像に祈った 深い悲しみは仏にも癒せぬ 彼女は惨状に耐えきれず 鳴戸の渦潮に入水した 姫の涙は後の世にも 柳井の海に流されるであろう 人々の慈悲の心となって 南無観世音菩薩慈眼視衆生福衆海無量 幾ばくかの星霜を経て 姫が沈んだ海の対岸で 激しい源平の合戦があった 敗れた平家の中から 木村半之丞という武士 見知らぬ土地を彷徨い歩き 刀傷を負って血を流しながら 大古庵の村に助けを求めた 源氏の咎めを恐れて 誰も落武者を助けようとしない 武士は屈辱に刀傷よりも痛んだ しかし古の姫の魂は この村に受け継がれていた 清佐とお絹の父娘 彼らは勇気ある人々 苦しむ都の男を見捨てはしない すぐさま彼を匿い 家に連れ帰って介抱した やがて半之丞の傷も癒えて お絹の優しさは仏を頷かせた 二人の間には 求馬という男の子が生まれた しかしめでたさにも 落人ゆえに外にも出られぬ 貧しさにお絹は乳も出ず 求馬はいつも泣いていた そのうち半之丞は 松かさを燃やして見せると 求馬が泣き止むことに気づいた 愛しい我が子は笑顔も見せた ある寒い夜 いつものように松かさを拾う 身を挺して自分を救ってくれた 家族のことを思いながら すると突然後ろから足音がする 振り返ると一人の武者 半之丞はすべてを悟った あたりには松かさが転がっていた 半之丞を探しにいった清佐は 亡骸を担いで帰ってきた 変わり果てた夫を見て お絹は絶叫して泣き崩れ 後を追うように息を引き取った 清佐は求馬を連れて姿を消した そののち時が流れ 村に若い旅の僧が立ち寄った 夜泣きをする子のあやし方 松かさを燃やすようにと教えた そうすると子供は笑うという 彼は何事もなかったように 念仏を唱えて去っていった 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 慈悲の行いに報いがない そう感じることもあろう だが彼らの魂は消えぬ その気高い心を受け継いだ者は 稀に時を超えて現れるであろう 神よ、柳井の誇りを慰めたまえ