
礼拝堂に 歌は消えて 石の床だけ 夜を覚えてる シエラはそっと 弦を抱きしめ 涙の跡を 指でなぞった このマンドリンは 誰のものなの わたしの胸で 鳴るはずなのに ゼノンの指と リュシアンの涙 星の印に まだ残っている 青き雫が 静かに揺れて わたしの中の 何かが痛い この子は本当に わたしのものなの それともわたしが この子に結ばれたの 答えの代わりに 弦だけが鳴く 知らない記憶が 胸を叩いた 弦の記憶が 夜を呼び覚ます まだ見えぬ名前が 奥で震える 失くしたものは ひとつではなく いくつもの声が この胸に眠る 赤き旗の下 騎士たちは黙る 誰も祈りを 口にしない 古き者は 異端と言い 若き者は 目を伏せた エリアスはただ 剣を抜かずに 赤き布を じっと見ていた 見たものを 記せば罪に 隠せばまた 名前を殺す 弦の記憶が 夜を呼び覚ます まだ見えぬ名前が 奥で震える 剣も旗も 答えを失くし ただひとつの問いが 朝まで残る 礼拝堂を ふたりは出て 灰の匂いの 道を辿った リュシアンの足跡 消えた先へ 古き町へと 風は流れる 王子の名前は 死に記され されど異なる 噂が残る シエラは弦を 強く抱いて 黙ったままで その跡を行く 町の角が 見えたその時 シエラの弦が 激しく震えた まだ弾いてない まだ歌ってない なのに指先が 音を知っている 石畳の下 酒場の壁に 誰かの声が 眠っている 名を奪う歌と 名を返す歌が まだ出会わぬまま 夜に潜んだ 弦の記憶が 町を呼び覚ます まだ名乗らぬ影が 奥で震える ここにある 次の真実が シエラの胸を 突き上げてくる まだ誰も 名を呼ばない されど弦だけが その歌を知る

