
あれからまだ数時間しか経っていないのに、体はどっと疲れていた。 「あぁ…結局、録画してたやつ見れてないなぁ…、配信見るかぁ…」 クタクタになりながら家事を済ませている最中、チャイムが鳴る。 「ちょ…何時だと思って…」 成美は眉をひそめながら玄関へ向かった。 扉を開けた瞬間、段ボールを運び込む業者と、その後ろから飛び出してくる見慣れた顔。 「今日からお世話になりまーす!なるみ〜んっ♪」 「ふぇっ!?!?!?」 成美は硬直した。雪乃はにこにこと笑いながら、玄関を通り抜けていく。 「ちょ、ま、何……?」 その問いに答えるように、成美の携帯が震える。ディスプレイに表示されたのは『大牧課長』。 (嫌な予感しかしない……) 通話に出ると、低く落ち着いた声が響いた。 『あぁ、もしもし、犀川くん?』 「あ、はい。犀川です、お疲れ様です。あの…」 『まず先に謝らせてもらうよ。君と高嶺くんを同居させることに決まった』 「は、はい?」 『彼女はこれまで、局の宿舎に一人暮らしをしているのだが、彼女もまだ学生の身分だ。社会経験豊富かつ、年齢の近い君と一緒にいる方がいいと思ってな』 「あの…別に構わないのですが、先にご相談くらい…」 『すまない。私より上の決定だ。手続きなどは全てこちらに任せてくれ。よろしく頼む』 それだけ告げると、課長は通話を切る。 「……勝手すぎるでしょ」 通話が切れたのと同時に、雪乃がリビングのソファにダイブした。成美はため息をつきながら、その隣に座る。 「なんか、どっと疲れちゃった」 「ふふーん、そう思って、なるみんにご褒美あげちゃいまーす」 雪乃はちょこんと膝を差し出して、成美の頭をそっと乗せる。 「お疲れ、なるみん。今日もかっこよかったよ」 「……そういうの、ズルい」 成美は小さな声でそう呟いたけれど、雪乃の手がやさしく髪を撫でてくれるのが、ちょっとだけ心地よくて。抵抗するのを、やめてみることにした。

