
サラディンは明らかにゆりを見て、「げ、げんきだったか?」と聞いていた。 「あ、はい。元気です」 とゆりは答えた。 「そうか。その、か、かわいいな」 サラディンは視線をそらせてぼそっと言った。 「え?」 (え?) とその場にいただれもが同じ声を心の中であげていたに違いない。 サラディンは照れたように横を向いて、「それじゃ」と言ってさっさと消えてしまった。ツボの火は元の高さに戻っていた。 ゆりはぽかーんとしていたが、他の者達も同様だった。 (え? 私、かわいいって言われたのかしら? それとも私の後ろの誰かに?) ゆりは自分の後ろを見たが、後ろには目をまん丸くしているスペードしかいなかった。 「あの、あなた様はどういったかたですか?」 火の神官がゆりに聞いた。 「え? 私は単なる一般人ですが」 「いえいえ、そんなわけありません。サラディン様が、あのサラディン様がただの見ず知らずの人間の前に出てきてかわいいなんて言う訳ありません」 「いや、私にも何が何やら……」 「お願いですから教えてください」 「いや、私は本当にただの一般人で……ビスコーさん、そろそろ行きましょう」 皆がゆりをじろじろ見ていたので、ゆりが促した。 「は、はい、行きましょう」 5人は神殿の外に出た。 「かあ様、かわいいって言われてよかったね」 シスはうれしそうだ。 「うん、まあ……」 「サラディン様が出て来てくれるなんてびっくりしたなあ。さすがお母さん」 ラギもうれしそうだ。 ビスコーもスペードもゆりに何か言いたそうだったが、ゆりは「次に行きましょう!」と移動を促していた。

