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自動ドアは私を知らない

V5.5

自動ドアは私を知らない コンビニの明かりが 私を呼んでいた おにぎりとカフェラテ それだけでよかった 残業明けの ヒールの音が 夜の歩道に 小さく響く 財布はある スマホもある 入店の意思も ちゃんとある ガラスの前で 一歩止まる 自動ドアなら 開くはずだった だけどドアは 静かなままで 私の顔だけ 映していた 一歩前へ 反応なし 半歩下がって 反応なし 右に揺れて 左に揺れて センサーの目を 探してる 上を睨んだ 私はここよ その目はなぜ 私の少し上を 見ているの 自動ドアは 私を知らない 私はここに いるのに ガラスの前で 立ち尽くして 文明だけが 気づかない 自動ドアは 私を知らない 人として 数えられない 私が低いんじゃない 世界の目線が 高すぎるだけ もう一歩前 ちょっとジャンプ カバンを振って 存在アピール スーツの裾が 夜に揺れて センサーは今日も 無口だった 何が足りない 重さなのか 熱量なのか 祈りなのか 私はたぶん 人間です 最近少し 自信ないけど 後ろから来た 知らない人に ドアは優しく 道を開けた スッと開いた 世界の隙間 私はそこを 人間みたいな 顔で通った 自動ドアは 私を知らない 後ろの人は 顔見知りみたいだった 私の名前も 過去も未来も ガラスの前で 止められる 自動ドアは 私を知らない 私はここに いるはずなのに 他人の存在証明に 相乗りする女 夜のコンビニへ 滑り込む 所詮私は 誰かのレールに 乗ってきただけ 開いたドアを 自分のためだと 思い込んできただけ 他人の存在証明に 相乗りする女 友達にも 言われたことある あなたは風に 吹かれっぱなしの草ね 褒めてるのか けなしてるのか わからないまま 私は揺れていた そうか これが答えなのね 私の人生は センサーの反応待ち 認められた人の 後ろを歩く 小さな影 ……いや おにぎりを 買いに来ただけだった 梅か ツナマヨか それとも 鮭か 自動ドアは 私を知らない 私はここに いるのに 世界の方が 少し鈍いと 言い聞かせて カゴを取った 自動ドアは 私を知らない だけどお腹は 私を知っている 存在意義より 賞味期限 今はそれの方が 大事だった おにぎりを買って 帰ろうとした 出口の前で また止まった 自動ドアは 私をまだ覚えてない 後ろの人が 来た スッと 世界が開いた 私はセンサーに 勝ち誇った顔で そこを通った