
冷めかけたコーヒー 角砂糖は、入れない いつからだったか それも知らない レシートの裏側 意味のない数字 財布に入れたまま ずいぶん経ってた 新しくなった店 狭くなった歩道 知ってるはずなのに 少しだけ迷った 自販機の値段を見て 高くなったなって そんなことで 歳を数えてる どうでもいいことばかり なぜだか覚えてる 名前もつかない場面ほど しつこく居座ってる 大事だったかなんて 今さら決めなくていい ポケットの底にある 古い硬貨みたいに 使わないままで 持ってりゃいい 駅前のベンチには 知らない誰か 昔より少しだけ 座面が低く見えた 横断歩道の途中 靴紐を気にして 渡り切ってから 別にほどけてない コンビニの袋から 缶が一本転がる 拾って立ち上がると 膝が少し鳴った こんな音 前はしたっけ まあいいか 誰も聞いちゃいない たいしたことじゃないのに 妙に引っかかってる 捨てる理由もないものが 棚の奥に増えていく 整理するほどでもない 飾るほどでもない たまに手に取って 「これ何だっけ」 それくらいが ちょうどいい 新品のシャツより 着慣れたやつを選ぶ 遠回りするほど 暇でもないけど 近道ばかりじゃ つまらなくなった いつからだろう ……まあ それもいい どうでもいいことばかり なぜだか覚えてる くだらなかった一日ほど 妙に手触りがある 意味なんてなくていい 理由もいらない 引き出しを閉める前に もう一度だけ眺めて 「こんなのあったな」 それだけ言って また閉める 冷めきったコーヒー 一口飲んで 苦いなって 今さら気づいた

