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【vocal:クロ】名前のない混色【Version:バラード】

V5

硝子の坩堝に 夜をひとしずく まだ 名前は ない 朱をひと匙 群青を 薄く溶かし 砂金の欠片 春の残り香 攪拌するたび 境界が やわらぎ 何かに似て どこにも属さず 揺れている だけ 図鑑の頁は 風にめくれ 指先を すり抜ける 分類は まだ 固まらない これは 炎……かもしれず これは 水……にも見えて 音にも 色にも なりきらないまま 呼べば ほどけ 黙れば 満ちる 未名のまま ひかりを帯びる 遠い国の律動 忘れられた調べ 祭の鼓動と 深海の静寂 混ざった……のではなく 触れただけ 溶けた……のでもなく 滲んだだけ たぶん 失敗……とも 成功……とも まだ 言えず ただ 脈打つ これは 風……かもしれず これは 影……にも似て 形を持たぬ 現象のようで 掴めば 逃げ 置けば 残る 名を持たぬまま 在り続ける 蒸留塔の先 滴るひと粒 誰の理にも 収まらず それでも 消えは しない 呼ばれぬまま 揺らぎながら 次の元素を 待っている 未だ 途中