
ハレルヤ、ミゼラブル
╭────────── ❦ ☾ ❦ ──────────╮ ハレルヤ、ミゼラブル ― 幕間 ― 本作はヴィクトル・ユゴー 『レ・ミゼラブル』を下敷きに、 原作では描かれなかった エポニーヌの一夜と、 その死後の対話を想像した楽曲です。 彼女はなぜ想いを告げなかったのか。 なぜ誰かを守ることはできても、 自分が守られることを 望めなかったのか。 物語の運命や結末を変えることなく、 その行間にあったかもしれない 「愛する資格」と 「愛される資格」を描いています。 泥だらけで、口が悪く、 最後まで自分を悪魔と呼ぶ少女が、 それでも誰かを愛し、 ほんの少しだけ、 自分の人生も愛してよかったのだと 知るまでの幕間です。 ❦ ❦ ❦ この歌の続きは、 原作の物語の中にあります。 映画『レ・ミゼラブル』も、 ぜひご覧ください。ただしちょい役です。 ╰────────── ❦ ☾ ❦ ──────────╯ ハレルヤ、ミゼラブル どうかあの人を 胸の穴も もう痛まない 指の先まで 凍えもしない 腹も減らない 白すぎる場所 こんな上等 あたしにゃ似合わない 泥のついた靴は どこだい 欠けたグラスも 見当たらない それより ねえ あの人はどうしたの 「生きています」 ……そう なら それでいい ほらね あたしの手なら いくらか役に立った それでいいのさ それだけで―― ……いいはずだったのに ほらハレルヤ ねえミゼラブル 死んでからやっと 寒くないなんて ずいぶん遅いじゃないの ほらハレルヤ ねえミゼラブル あの人が笑ってるなら それでいい あたしの分なんか 初めから無かった へっ! 悪魔にはよく似合う話だろ 最期にあの人が 抱いてくれた あたしの顔だけ 見ていてくれた 可哀想だっただけかもね それでも腕は あったかかった お姫様みたいだったなんて 口が裂けても 言えるもんか ……まあ ほんの少しくらいなら 嬉しかったよ ほらね あたしの手なら いくらでも差し出せた それでいいのさ それなのに―― ……受け取れなかった ほらハレルヤ ねえミゼラブル 泥棒猫にも 涙が出るらしい 笑っちまうじゃないの ほらハレルヤ ねえミゼラブル 守る方なら いくらでもできたのに 守られる場所なんて知らなかった へっ! 狼の娘にゃよく似合う話だろ そういや昔 安酒場で 酒臭い爺さんが ひとり あたしの顔見て 妙なことを 言って笑って 帰っていったっけ あんたが誰かを 大事にできるなら ――なんだったかな へっ! 忘れちまったよ ……たぶんね 振られるっていうのは 同じ地面に立つ奴のすることさ そう言って笑った あたしはずっと 自分だけ道の端へ追いやって 好きだと言って 傷つくことも 明日のパンを 欲しがることも 誰かに帰りを 心配されることも みんな 同じ地面の上だったなんて ……今さら教えるんじゃないよ 天使さん ひとつだけ聞いていいかい もしもあたしが 生きたいって言ってたら それも欲張りだったのかい ……そっか ほらハレルヤ ねえミゼラブル 悪魔のあたしに 祝福だなんて 神様 帳簿をつけ違えてるよ ほらハレルヤ ねえミゼラブル 泥は落とさなくて いいだなんて 神様 口も悪いままでいいのかい だったら――あたしも あの地面に立ってたってことかい ほらハレルヤ ねえミゼラブル 悪魔のあたしに 祝福だなんて 神様 帳簿をつけ違えてるよ ほらハレルヤ ねえミゼラブル 誰かを好きになって心配されて 神様 明日を欲しがったって ……よかったのかい ほらハレルヤ ねえミゼラブル 悪魔のあたし 天使じゃないよ 神様 最後まで悪魔で結構さ へっ! そんな顔するんじゃないよ どうかあの人を ……なんだ あたしのいた世界も 暗いだけじゃ なかったじゃないの へっ! まあいくらかね寒くないよ

