「ねえ、何時頃 来られそう?」 彼のメッセージに答える "五時半には ソッチに行くね " 「ご馳走作って待ってるよ」 甘い言葉に 頬が緩む 今日は二十歳の誕生日 電車に揺られ彼の元へ ガタゴト揺られて 夢の中 セピア色の乗客たち 左隣に俯く男 前には二人の女の子 右隣は男子学生 すぐ側に巨大なオンナ 其処だけ時が止まったみたい ふと目が覚めて見渡すと  電車は静まり返ってる 乗客は私ひとり 満員だった筈なのに ちょっと待って…何か変だ 夕方なのに 外は夜 ゾッとするほど真っ暗闇 見上げた中吊り広告は 手鏡 姿見 コンパクト どこもかしこも カガミだらけ 悲鳴を飲み込み前を見る 窓に映る青ざめた顔 その顔がニヤリと嗤いかけ 瞬間 私の脳裏が 一面ムラサキに染まった どうしよう 怖い怖い 今すぐ彼の声が聞きたい 震える手でスマホを取り出す   待ち受けの幸せそうな二人 祈る気持ちでダイヤルを押す 「どうした?」心配そうな声 わずか二秒で断ち切られた 待ち受けの二人もひび割れた スマホもシャットダウンされた 気づけば 私は一人きり もう何も繋がらない   「次はー…きさらぎ駅ー きさらぎ駅ー…」   無機質なアナウンスが流れ 電車はまもなく停止した 暗闇の中 音も立てずに ああ…そうか そうだったんだ 今日は二十歳の誕生日 祝いが呪いに姿を変え 私の世界は幕を下ろす 第二幕は永遠に来ない 外に降りるとレールの先に 揺れ動く人影が見えた だけど私は気づいている あれはアチラ側の者だ 分かっている 分かっているけど 淋しくてついて行くのだろう もう何も映さないスマホ 見えない彼に別れを告げた 「………さよなら」