
五年住んだ狭い部屋 合鍵ふたつ マグはひとつ 玄関にまだ靴のあと 今日も帰る気がしてる 安いソファと黄ばむ灯り くだらない夜を積み重ねた なのにあなたは息を吐いて 「少しひとりになりたい」と言う 先にずっとって言ったのは そっちだったでしょう ここまで来といて今さら わたしだけが夢見たみたいに言わないで 29で あんたは変わって キッチンの灯りで ワインを飲んでる さよならだけじゃ足りない ため息ひとつじゃ終われない 信じさせといて 置いてくなよ 29で クローゼットの右半分 空いたままでもまだ狭い 歯ブラシだけは消えたのに レコードだけが残ってる 母さんからの着信に 「元気だよ」ってまた嘘つく 「いい女だったって思うよ」 そんな言葉じゃ寝れやしない 来年あたり指輪だねって 笑ってたでしょう 未来の話をしたくせに きれいな顔で終わらせないで 29で あんたは変わって キッチンの灯りで ワインを飲んでる さよならだけじゃ足りない ため息ひとつじゃ終われない 信じさせといて 置いてくなよ 29で これを大人になるって 呼ぶのはずるいよ 約束で部屋を埋めといて 片づけるのはわたしひとり 五年分って そんな軽くない コートみたいに脱いで 終わりにしないで 29で あんたは変わって キッチンの灯りで 朝まで飲んでる さよならだけじゃ足りない 「しょうがない」じゃ済ませない 信じさせといて 置いてくなよ 29で 半分の部屋で 半分の未来を まだ抱いてる 荷物は持ってっていいよ でも時間は返してよ 信じさせといて 置いてくなよ 29で

