ドアノブ 金属 ひやりとする温度 掌に移る 昨日の濃度 風向き一つで変わる証拠 透明なまま 侵入するコード 乾いたシャツに 微かな層 混ざった空気がほどける模様 洗いきれない 記憶の繊維 繊維の奥で揺れてる気配 踏切 通過 遮断の音 通り過ぎても残る残音 音じゃないのに消えない理由 呼吸の奥に居座る自由 吸い込むたびに増えていく 外じゃなくて内側で 消そうとするほど広がって 輪郭だけが浮かび上がる まだここにある 形のない痕 触れられないのに 触れてくる 思い出よりも遅れてくる この現象に名前はない 抜けないまま 巡る粒子 閉じても閉じても戻ってくる 手放すことを許さない 空気の中の未完のまま 改札 抜ける 流れる群れ すれ違う誰かに似た揺れ 似てるだけで止まる歩幅 理由もなくて増える余波 引き出し奥に眠る布 季節外れの温度を持つ 触れた瞬間 ずれる時間 過去と現在 重なる瞬間 言葉を置いたテーブルの跡 跡だけ残して消えた温度 残らないはずのものばかり 残ってしまうこの構造 見えないから消せなくて 見えないから残り続ける 輪郭のないこの存在 名前をつければ壊れそうで まだここにある 形のない痕 触れられないのに 触れてくる 思い出よりも遅れてくる この現象に名前はない 抜けないまま 巡る粒子 閉じても閉じても戻ってくる 手放すことを許さない 空気の中の未完のまま 呼んでないのに 戻ってくる 選んでないのに 残ってくる 拒めないほど自然な侵入 ここまで来るともう生活 まだここにある 消えない層 触れないままで触れてくる 終わったはずの時間より 遅れて届くこの気配 抜けないまま 巡り続け 閉じてもなお開いていく ――離れたことも知っている それでも残る この現象