
かごめ、かごめ。 春の朝、薄紅の霞に包まれた庭に、子らの輪が描く影絵。 一つ、二つ、手を取り合い、声を張り上げては、風に溶けゆく童歌。 どこからともなく、鳥が一羽。 その小さな羽ばたきが、まるで時を刻む振り子のよう。 「かごの中の鳥は、いずこへ行くや?」 囁き問う声に応じるかのごとく、枝葉の隙間から陽が舞い込む。 かごめ、かごめ。 囚われた鳥が、果たして誰なのか。 それとも、鳥こそが我々を眺める存在か。 謎かけの輪が広がるごとに、思索は深まり、時は止まる。 誰そ彼の空、東雲の縁に佇む影。 それが友の影か、迷い子の影か。 あるいは、夢の途切れた先に立つ己の影か。 輪は再び締まり、声は高まる。 けれどもその問いの答えは、風に乗りて遥か彼方へと消えるのみ。 ただ、遊ぶ子らの笑顔が、時代の無垢を永遠に封じ込める。 かごめ、かごめ。 あの朝露の庭も、春霞の香りも、 やがては記憶の彼方、遠い幻と化すだろう。 それでも、童歌の調べは、なお人の心に囁き続ける。

