【終焉の神籬の巫女】 裂けし大地の胎動に 夜は朱を孕みて哭き 星は逆さに堕ちゆきて 終りの兆し 今 満つ 刃風吹けば 野は骸に覆はれ 城は灰へと 帰りゆく 勝ちし者も 敗れし者も 同じ黄泉路へ 誘はる 祈りは土へ埋もれ 神は名を喪ひ 人は業の旗を掲げ また人を討つ それでも ただ一つ 鈴の細音(ささね)のみ 終焉の門のほとりにて 絶えず 揺れたり 揺らげ 神籬の巫女 この身 灰と散るまで 山よ伏せ 海よ鎮まれ 八百万 掬ひ給へ 揺らげ 名も無き御霊 血と祈りを 重ね奉り この世の終り 今ここに 喰ひ止めよ 白妙(しろたへ)の衣に 朱は静かに滲み 裸足のまま 屍を越え 巫女は 門へと進みゆく 帰る里なく 待つ人もなく ただ裂けし時の涯に 魂を 置き去りにす 乞へど声は風に散り 叫べど空は応へず されど御身は 一歩 前へ出づ 終焉よ 此処に息を伏せよ 黄泉の潮 今 引き返せ 終焉よ 此処に息を伏せよ この命 尽きるとも 海は裂け 空は崩れ 黒き神 影を成し 万の鼓動 一斉に 息を止めたり 揺らげ 神籬の巫女 この身 灰と散るまで 雷 天へ帰り 黄泉の裂け目 今 閉ぢよ 揺らげ 名も無き御霊 この世の罪を 背負ひ 終焉よ この命と 引き替へに 刃 胸を貫かず 声 喉に残さず ただ御霊のみ 門の彼方へ 投げ奉る その刹那 天地は凍り 黒神は まなこ伏せ 終焉は つひに 息絶へたり 揺らげ 神籬の巫女 御名は 今 失はれ 祈りも 血も すべて抱き 世を 今日へと戻すため 揺らげ 名も無き御霊 誰に知らるることもなく この世は ひそと救はれ 御身は 歴史に留まらず 戦は凪ぎ 空は青を 取り戻し 人は 何も知らず また 笑ひ合ふ 風吹けば 何処よりともなく 鈴のひと音 今も 木霊しつつ


