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昨日、天使を食べた。#sunoシャッフル

STUDIO

「あの子。いなくなっちゃったんだって」 「昨日まで、そこにいたのに」 いつもの窓辺、いつもの席、いつもの声。 なのに今日は、誰も知らない。 「ねえ。あの子の名前、なんだったっけ」 きのうの雨を、ひとくち つめたい空を、ふたくち 窓辺に残った、白い羽根。 まだ名前は、食べないで。 眠る街の時計だけ。 午前零時を、噛み砕く。 誰かが呼んでいた気がする。 でも誰の名前だった? 昨日、天使を食べた。 羽根の味がした。 やさしい声を、吞み込んで 朝を待った。 きのう、てんしをたべた。 だからもう、だれもしらない。 あなたがいたことさえ、 この世界は、わすれてしまった。 かち、かち、かち。 時計がひとつ 昨日を吐き出す。 わたしはそれを もういちど 食べた。 からっぽのベッド。 ひらいたままの窓。 風だけが知っている あなたのゆくえ。 床におちていた、 小さな白い羽根。 ひろった指先から 記憶が、ほどけていく。 あなたの 、笑顔 あなたの、声 あなたが、呼んだ 「わたしの名前」 ひとつずつ。 口の中で、 甘く、融けていった。 昨日、天使を食べた。 羽根の味がした。 かなしい声を、嚙み砕いて 朝を迎えた。 きのう、てんしをたべた。 だからもう、誰も探さない。 行方不明の天使なんて 最初から、いなかったみたいに。 ちがう。 たべたのは あなたじゃない。 あなたが笑っていた、きのう。 あなたが空を見ていた、きのう。 あなたがわたしの名前を呼んだ――。 さいごの一日。 それを全部 たべてしまった。 わすれたかったんじゃない。 わすれられたくなかった。 だからわたしは きのうをたべた。 朝が来る。 羽根が消える。 名前が消える。 声が消える。 そして―― わたしの中だけに まだ あなたがいる。 きのう、てんしをたべた。 いまも胸の奥で 小さな羽音がする きのう、てんしをたべた。 今日にはもう、だれもしらない あなたがいた、空の色も あなたが落とした、ひかりも きのう、てんしをたべた。 あしたになれば わたしもわすれる。 だからさいごに もういちどだけ―― あなたの名前を よばせて。 あなたの名前を よばせて。 きのうは、もういない。 てんしも、もういない。 それでもわたしの中で 白い羽根が ひとつだけ ねむっている。