Song Cover Image

『桐壺(Kiritsubo)』

いづれの御代にか 夢のごとき御縁に 身を委ね奉りし 桐の花…… 人の世の中 数多なる女(ひと) 同じ御殿に 咲き競いけり されど君の 御心は いかでか我に 向け給いけむ 嬉しきことと 思えばこそ 背に刺さる 人の恨み 愛されまつる そのほどに 我が居場所こそ 失せにけり 廊を渡れば 聞こゆる声 扇に隠して 涙こそ流せ されど君の 呼び給う声 それのみぞ我が 心を慰めし 君に愛され 我は咲きぬ 束の間の春 夢見るごとく されど寵愛の その代わり 我はすべてを 失いにけり この腕に抱く 幼き御子よ いかでかこの子を 守り給わぬ 母なき明日と なりぬとも どうか忘れ給うな 我が愛の 形見なれば…… 春の霞も 夏の月も 秋の虫の音 冬の白雪も 君と眺めて ありたかりけり この子の生末も 見届けまほし されど我が身は 日に日に弱り 御簾の彼方も 遠くなりゆく 君の涙を 見奉るは つらければこそ 笑みてありたし もしも来世というものあらば 今一度こそ 巡り逢わめ その折は誰に 咎めらるることなく 静けき宿にて 君が御側に…… 君に愛され 我は生きぬ 短き春を 胸に抱きて 憎しみもまた 恨みも捨てて ただ静かに 消えなむとす 我が御子よ 健やかにあれ 世の憂き風に 負け給うな 母はいつも 空の彼方より 君を見守り 奉らむ 桐の花びら ひとひら 夜の御殿に 散りにけり さらば…… 愛しき君よ 我が御子よ…… いかでか幸せに あれかし……