
遠くで君の声がする。地平は茜色に染まり、歪なシルエットが浮かび上がる。 縁側に置かれたひとつの角砂糖、そこへ続く蟻の行列は一体どこへ行くというのか。ワタクシは意味を忘却した舶来の地図を広げ、退屈極まる昼の続きを過ごしているのだ。 ふと、欄間の彫刻が手招きしているような錯覚を覚えたが、ただそんな気のせいに過ぎないなのだ。 風が止まり、奇妙な静寂が訪れた。世界の輪郭が滲み始め、これは明晰夢(ルシッド・ドリーム)なのか、現(うつつ)なのか、その境界線が溶けていくのを感じるのだ。 さらば、灼熱の幻影よ。夕闇の向こうで砕け散るがいい。セピア色の網膜が捉えたのは、不可解な季節の残像か。論理の破綻したこの世界で、僕らは解決不能な問い(アポリア)の円舞を踊るのだ。 木彫りの兵隊は俯いたまま動かない。時計の針だけが滑るように時を刻んでいるのだ。埃を被った蝶の標本を眺めていると、束の間の感傷が過る。すると唐突に、街灯の明かりが私を照らし出したのだ。 空の階調が反転し、既視感と未知の憂鬱(メランコリア)が入り混じる。これは差し迫った終焉なのかもしれない。序曲が静かに響き渡る。 さようなら、焦げ付くリアリティよ。落日の彼方で融解せよ。プリズムの如く分光した不条理な日々の残光、答えのない問いを抱きしめて、僕らは詭弁(ソフィストリー)の歌を歌うのだ。 思考の迷宮に声が響く。存在の証明とは、すなわち不在の肯定に他ならない。脳裏に点滅する無意味な符号、すべては戯れ言の集合体なのだ。 されど、この胸を焦がす何かがある。それは名前のない感情の奔流なのだ。 さらば、灼熱の幻影よ。夕闇の向こうで砕け散るがいい。セピア色の網膜が捉えたのは、不可解な季節の残像か。論理の破綻したこの世界で、僕らは解決不能な問い(アポリア)の円舞を踊るのだ。 やがて影が伸びて、すべてを飲み込んでいく。静かに、ただ静かに、世界は閉じていくのだ。
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