雨が、街を洗い流していた。 ヒールの音が、濡れたアスファルトに吸い込まれる。 追ってくる足音は、もう聞こえない。 ただ、このままで終わるとは思っていなかった。 ポケットの中のメモリカードを握りしめる。 これさえ渡せば、すべて終わるはずだった。 そう信じていた。彼が死ぬまでは・・・ 恋人の声が、まだ耳に残っている。 彼が言い残した言葉、最後の頼みの綱だった。 昔の仲間が、どんな男なのかは知らない。 その仲間が、敵か味方かわからないまま。 もう今の私には、それしか道がなかった。 ネオンが滲む路地を抜け、重いドアの前に立つ。 指先が震えていたのは、寒さのせいだけじゃない。 ドアを押すと、煙とジャズの匂いが私を包む。 カウンターの端に座る男の背中を見た瞬間、 すべてが、もっと複雑になると悟った。 運命が、音もなく動き始めた… バーテンの視線が、一瞬だけ私を射抜く。 その奥に、言葉にならない警告が見えた気がした。 ここも安全じゃない。でも、もう戻れない。 私の夜は、ここから始まる… 続くのか…