
赤いロウソク シトラスの香り 笑いながら 帰っていった人 指名もなくて 気遣いばかり でも 話すときはいつも娘のこと “立派じゃない”って何なんだろう ふざけてても 全部本気だった 汗だくのシャツと、その目の奥に 誰より熱い人がいた タバコのあとで残るのは 煙と ちょっとの優しさだけ 名前も知らなかったけれど あなたは確かに だれかの「父」だった 制服のままのキャンセル少女 その声が どこか似ていて 受け取った「ありがとう」越しに 言葉にならない愛が残った 週一回だけの場所だったけど そこでは素直になれたんだろう 自慢も愚痴も冗談みたいに けれど 全部ほんとうだった タバコのあとで残ったのは 新宿三丁目、差し込む西日 女王なんかいないけれど それでも確かに あなたは ここにいた タバコの煙が消えたあと 少しだけ 息がしやすくなった

